「骸ぉ!」
少女が骸に飛びつく。
正面から向かってきた少女を受け止めると、彼は笑顔で少女に訊ねる。
「どうしたんです?ユキ」
「あのね、今日骸の誕生日じゃない?だから、一緒に出かけようと思ったんだ!」
「クフフ…それはいい考えですね」
ユキの頭を撫でる。
骸に撫でられて、幸せそうに彼女は笑う。
「では、少し待っていてくださいね?今準備をしてきます」
「うん!」
元気に返事をし、彼女はどこかへ走っていった。
骸はそれを見送り、準備のために自分の部屋へと戻った。
数分後。
ユキの少し後ろを骸は歩いていた。
どうやらユキには見たい映画があるらしく、どうせ行くところも無いからと二人は今映画館に向かっている。
――それにしても、なんだか周りの視線が多い気がしますね…。
自分が好奇の目で見られるのは良い。
だがユキもそう見られているのではと考え、骸は軽い怒りを覚えていた。
しかし、実際は好奇の目を向けている人などは居なかった。
普段とは違い、カジュアルな格好をしている骸。
可愛いワンピースに身を包んでいるユキ。
もともと顔が整っている二人なので、並んで歩いているととても目立つのだ。
そのため、周りの視線を集めている。
そんなことを知らない骸は、つい彼女に訊ねてしまった。
「ユキ、僕と一緒に居ていいんですか?」
突然の言葉に目を丸くするユキ。
それから、可愛らしく小首をかしげて彼女は言った。
「骸と一緒に居たらダメなの?」
「いえ、そういうわけでは…」
「ならいいじゃん!」
綺麗な笑顔を浮かべて言ったユキには迷いが無い。
その笑顔につられて笑顔を浮かべると、ユキの手を取った。
「骸?」
「人が多いですから、はぐれないように手をつなぎましょう」
「…うん!!」
そう返事をしたユキの顔はとても幸せそうだった。
――プレゼントは君のその笑顔で十分です。