まだ寒さの残る季節。
そんな中、彼女は白く小さな花を愛でていた。
「それ、どうしたんだ?」
「友達にもらったんです。特別な花言葉があるんだって」
オレの問いかけにそう答え、彼女は笑う。
この時は、そんな友達が出来て良かったなんて呑気に考えていた。
なんでも花や花言葉に詳しい友人だとかで、「スノーフレーク」というらしいその花はまだ2月だというのに可愛らしい白い花を咲かせていた。
数日後。
――特別な花言葉がある
あやかのその言葉がふと気になって花言葉を調べてみる。
"スノーフレーク"
入力して検索したが、出てくる花はどうにも違う花のようだ。
スノーフレークはすずらんにも似た花を咲かせるようだが、見た目の違うこの花は……スノードロップ?
どうやら、スノーフレークと間違われることもあるらしいこの花が、どうやらそれらしいようだった。
開花時期も当てはまるその花の花言葉は、「希望」「慰め」。
そして、隠された花言葉を見てオレは手を止めた。
「なあ、あやか」
「どうしました、慎一郎さん」
友達からもらったと喜んで花を愛でている彼女にこんなことを言うのも躊躇われるが、何かあってからでは遅い。
「その花を送った友達は、特別な花言葉があるって言ってたんだよな?」
「はい。普通の花言葉じゃないものがあるんだって言ってました」
「そう、か」
歯切れの悪いオレを不思議そうに見つめるあやか。
こんなことを言っても、いいのだろうか。
少し悩んだ末に、「オレの考えすぎかもしれないけど」と前置きをした上で自分の考えを伝える。
その友達とは距離を置いた方がいいかもしれないこと、そしてしばらくは身の回りに特に気をつけること、何かあったらオレや和谷にすぐに連絡すること。
まだ、何か起こるとは限らないし、純粋にその友人があやかを思ってのプレゼントかもしれないけど。
ただ、それでもオレには友人の「特別な花言葉がある」という言葉がとても不安でならなかった。
あなたの死を望みます
2020.08.23