恋しい体温02
「ん、すぐ入っていいんだよ」
「だめだ」
妖艶な眼差し。
そんなに煽らないで欲しい。
このままだと自分がどうにかなってしまいそうで。
必死に理性を保とうとしているのに、彼はいとも簡単に崩してくる。
私はこんなにも欲望に弱い人間だったのか?
「ふふ、あなたらしいね」
「当たり前だ…」
小さく笑って、唇を寄せれば薄青の瞳が閉じられる。
顎を捕らえて口を開かせると、待っていたと言わんばかりに彼の舌が私を招き入れる。
「ふ……ずるいな」
「え?」
「独り言だ」
いつも主導権は彼に握られている気がして仕方ない。
なんの不都合もないし構わないのだが。
口付けを再開すれば彼もそれに応じる。
水音と共にくぐもった声が漏れるたびに背筋が張るような感覚に襲われる。
こんな彼を前にして理性なんて保てるはずがない。
「っん…?ぁ、ちょ…」
唇から離れて白い肌を這うように辿れば、くすぐったいのか彼が身を捩って逃れようとした。
先ほど付けたばかりの赤い痕を少し舐めると彼が驚いたように反応する。
「あっ、ふふ…何してるの?」
「貴殿を噛みたくて仕方ないのだ」
「えぇ?変なの…」
「そうやって煽るからだろう?」
そう言って鎖骨を軽く噛むと甘い声を上げて反応するのだから、やはり彼はずるい。
「ん…っ、やらしいね」
「貴殿に言われたくないな」
「失礼だな、僕が淫乱みたいな言い方して」
「そうだろう?」
「な、あっ…ん!」
不満げにしていた彼の表情が一瞬にして快楽に溺れる。
ずっと触れずにいた彼自身を握りこんだのだ。
「もうこんなになってるが?」
「やめっ…!」
「ほぅ?」
「あっ、ぁっ…だ、め…っ!」
緩くしごき始めれば快楽から逃れるように私の胸板を押してくる。
「やめてほしいか?」
「っ、意地悪!」
「首に手を回せ、体勢を変えるぞ」
頬を上気させ瞳を潤ませながらも従う彼。
男にしては軽い体を持ち上げ、足の上で横抱きにすればせがむように顔を寄せてくる。
再び深く口付けしながら彼自身を握り込むと、もう限界だと言わんばかりに彼が震えた。
「んぁ…ぁ、も……」
「どうした?」
「っ、タシャ…!」
「どうしてほしい?」
わかっているのに。
ただ彼の口から聞きたいのだ。
荒く息をする彼が私を睨む。
「わかる、でしょ!?」
「貴殿の口から聞きたいのだ」
促すように軽いキスを落とし、彼自身をしごいてやれば観念したかのように彼が目を伏せる。
長い睫毛が白い肌に影を落とす。
「っ、僕はタシャが」
「?」
「タシャが、欲しい…っ!」
それが何を意味しているかは容易に想像できて。
予想以上の答えに私は口元が緩んだ。
「何だよ…!」
「貴殿が可愛くて仕方ないのだ」
「なっ…っぁ!?ぁん、あぁぁっ!!」
少しペースを上げてしごけば彼はすぐに達して熱を放った。
手に溢れたそれを舐めれば、力無く彼が睨みつけてくる。
「最低」
「味見だ」
「今日はもうキスしない」
涙をいっぱいに溜めてそう言う彼はやはり可愛くて、扇情的だ。
彼の熱を指に纏わせてそっと秘所に触れれば、ひくりとそこが動く。
「ぅ、じらさないでよ…」
「そういうつもりはないのだが」
敏感になっているようで少しの刺激にも反応を示した。
ゆっくりと彼の中に指を射し込めば、ぎゅっと私にしがみついて息を詰める。
「んぁ、やだ…!」
「いやか?」
「じらすから…っ」
ふるふると震えながら涙を流す彼を見ると少し気の毒になる。
しかし慣らさないと痛いのは目に見えている。
今日の彼はいつもより快楽に素直だ。
慣らすペースを変えずに思案していると、不意に彼が私自身を握り込んだ。
「ユーリス?」
「僕ばっか、イイ思いするわけには…ぁ」
「───────なかなか煽ってくれるな」
「え、ひぁっ!?」
一気に指の本数を増やして彼の好む場所を刺激すれば、声のトーンが跳ね上がる。
「あぁっ、ひん…っひぁぁ!」
「これで満足か?」
「た、しゃぁ…っ」
肩にキリキリとした痛み。
彼が私の肩に爪を立てていた。
プライドの高い彼が声を出さずに私に懇願する。
「…入るぞ」
指を引き抜くと彼の体を持ち上げ、ゆっくり自身の上に下ろしていく。
「あ、んん……んぅ」
「くっ…力を抜いてくれ」
彼の中は熱く柔らかい。
締め付けのきつさに欲を吐き出すのを抑えるのも一苦労だ。
彼の体を下ろしきると少し上に彼の顔があった。
口付けようとすると、彼が避けようとしたので頭を捕らえて口内を犯す。
「んんー!」
「っ……どうした?」
「キスしないって」
「すまない、だがやめるわけにはいかない」
そこまで私も余裕ではない。
もう一度深く口付けると彼の腰を揺らし始める。
「ああぁっ!あっ、あっ…」
彼が私に寄りかかるように倒れ込むと、肩に口を押さえつけた。
声を抑えたいのだろう。
細やかな銀の髪の間から覗く首を軽く噛むと、彼が声を漏らした。
「んぁっ、ねぇ…!」
「っ…何だ?」
「もう、僕、だめ…っ」
耳元でそう囁き彼が私を締め付ける。
息を呑んで耐えたが、私も限界が近い。
「ユーリス…」
「っん、タシャ…!」
繋がったまま彼をベッドに寝かせれば、すがるように腕を首に回してくる。
薄青の瞳が情欲に揺れる。
きっと私も同じ目をしているだろう。
彼の腰を固定すると、私は今までより激しく動き始めた。
「んあぁ!あっ、あぅ、っん!!」
彼の腹に自身の先走りが落ちる。
二回目の限界が近いのだろう。
かく言う私も余裕はなく。
「っ、ユーリス…」
「たしゃぁ…!あっ、んあぁ!!!」
「くっ…!」
彼が一際高い嬌声を上げて熱を放った。
ぎゅっと彼の中がキツく脈打ち、私も中に熱を放った。
お互いの熱と汗が混ざったにおいに頭がくらくらする。
私の下でぐったりとする彼の頭を撫でてやると、薄目を開けて彼が呟く。
「………疲れた」
「すまない…付き合わせてしまって」
「いいよ、あっ」
「どうした?」
「まだ抜かないで…」
ぎゅっと彼が私を引き寄せる。
普段なら早く体を綺麗にしたがるのだが。
私の髪をくしゃりと掴むと唇を合わせた。
「…しないのではなかったか?」
「気が変わったんだよ」
「そうか」
私からも唇を合わせると、彼は幸せそうに微笑んだ。
「…ちょっと寝よ?」
「体は」
「いいよ…あとでで」
言われるがままに彼の横へ体を寝かせれば、甘えるように彼がしがみついてくる。
「んっ?……タシャ、さすがにもう…無理」
彼の中で再び自身が熱を持ち始めていた。
こんな些細なことで欲情するなんて。
自分が情けない。
理性も何もないではないか。
「…申し訳ない」
「いいよ…それより、もう、眠い」
薄青の瞳がゆっくり閉じられる。
疲れてしまったのだろう。
情事の名残はあるものの、いつも通りの彼に戻ってしまったようだ。
「──────タシャ」
「っ、どうした?」
もう眠りに落ちたと思っていたので少し驚く。
薄青の瞳が重たげに開くと、私から目を逸らした。
「?」
「……起きるまでそばにいて」
「!」
ほんのり彼は頬を赤くして目を閉じた。
ドキリとしないわけがない。
しかし私は持ち直した理性を離さなかった。
優しく彼を抱き寄せると、やんわり髪を梳き耳元に囁く。
「もちろんだ、ユーリス」
耳が赤い。
でもここは気付かないフリをしておこう。
腕の中にはこんなにも温かい彼の体温。
あぁ私も眠りに落ちそうだ。
瞳を閉じてもう一度彼の髪を梳く。
汗でいつもよりサラサラではないが悪くない。
なんて愛しい───────
(先に寝るなんて反則だ!)
ぎゅっと抱き締められた腕の中で、僕は彼の体温だけを感じていた。
少し不器用だけど、誰よりも僕を大事にしてくれる。
(でも─────)
やっぱり抜いてもらうべきだった。
こうすれば離れないと思ったんだけど。
(気になって眠れないよー!)
───────────────────
す、すみません…!
書き始めたのに着地点が見えませんでした(^ρ^)
タシャを手の上で転がしてたはずが転がされるユーリス!
というかタシャが誰こいつ状態←
お付き合いありがとうございました!
2012.2.27
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[mokuji]
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