酔っ払い注意報















(あぁ、僕、夢見てるんだ…)


 変な時間に目が覚めて、夜風にあたろうとベッドから出た。
 そこまではいつも通り。
 でも目の前の状況が飲み込めない。
 




 …夢?

 爪で指を刺す。
 痛い。

 つまり、夢ではない。





 …じゃあ見間違いかも。
 寝ぼけてるのかな。
 端から僕のベッド、エルザのベッド、ジャッカルのベッド、クォークの……







(や、やっぱり見間違いじゃない…!)



 クォークのベッドに、クォークと普段はいないジャッカルが眠っている。
 捲れたシーツからは逞しい腕が────




(服着てないの!?)



 そんなまさか。
 ジャッカルって女遊びしてる人だし。
 クォークは…あんまりわからないけど。
 いやでも男同士だし…





(あ、あぁ…すごく疲れた、眠れそう…)



 僕はベッドに戻った。
 すぐに心地良い眠りの波がやってきて、意識が攫われていった─────




























「ってめぇ─────!!!」


 怒鳴り声で覚醒。
 窓からは朝日が射し込んでいた。
 眠いと訴える体を起こすと、視界の端を何かが掠めていった。


「わ…わりぃわりぃ!この通りだ!」
「今すぐそこになおれ、たたっ斬ってやる」


 ジャッカルが腹を押さえてうずくまっている。
 先程視界の端を掠めたのは、クォークに腹を蹴られて吹っ飛んだジャッカルだったようだ。
 状況から判断すると、先程の怒声はクォークのものだろう。


「大将!落ち着いてくれ!」
「落ち着いてられるかー!」
「…朝から何」


 本当に騒がしい。
 僕は欠伸を噛み殺して二人に問う。
 すると僕の事なんか忘れてたという様に、二人が僕を見て固まった。


「ユーリス…すまなかった」
「わ、わりぃな」
「………」


 そう言えばこの二人…一緒に寝てたよな…

 昨日の光景を思い出す。
 しかし今になって見ると、二人共ズボンを履いていた。

 落ち着いて考えると、ジャッカルが深夜に帰ってきて、間違えてクォークのベッドに入った。
 これが予測できるのではないか。


「…僕は先に行くよ」


 深く関わるのはやめよう。
 面倒くさい。
 僕は手早く髪を結ぶと、二人の間を通り抜けて部屋を出た。











「ユーリス、おはようございます」
「あぁ、おはよ…」
「んん〜?今日はいつにも増して顔色悪いんじゃねぇか?」


 朝食の席には、既にマナミアとセイレンがいた。
 相変わらずマナミアは朝から大量の食材を消費している。


「…気のせいじゃない?」


 素っ気なくセイレンの問に答えると、僕は自分のサンドイッチとコーヒーを確保して端の席を陣取る。







「今日はクォーク遅いなぁ」
「うふふ、いつもより沢山食べれそうですわ」


 二人のやり取りを見て、朝の光景を思い出す。
 クォークの怒りは半端じゃなかった。
 朝からいい迷惑だったけど。








「クォークさん、おはようございます」
「おはよう…マナミア、それぐらいにしておけよ」
「クォークもいつもより顔色悪いな、なんかあったか?」


 セイレンの言葉に、クォークのこめかみがピクリと動く。
 そして盛大なため息。


「なんだよ、朝から辛気くせぇ」
「あら?クォークさん…虫刺されですか?」
「な…!?」


 朝は気付かなかったが、クォークの首筋に赤い痕がある。
 マナミアにそれを指摘されると彼は慌てて近くの鏡に駆け寄った。





「ど、どうしたんだ…?」
「……あの野郎…………!」
「おい!?クォーク!」


 すごい勢いでクォークが部屋に駆け戻っていく。
 そして半開きの部屋のドアから再び怒声。


「ジャッカル!!」
「ひっ!?大将ここは宿」
「問答無用!!」


 ジャッカルの断末魔の叫びの後、静かになる部屋の中。

 尋常じゃない叫び声だった。
 セイレンが僕に部屋を見てこいと目配せしてくる。
 冗談じゃない。









 部屋のドアが大きく開き、人が出てきた。


「…エルザ!」
「みんなおはよう」
「おい、クォークとジャッカルは…」
「あぁ」


 心配そうなセイレンをよそに、エルザがいつものように笑う。


「二人とも元気だよ、俺もさっきの騒ぎで起きたんだけど」


 最初の騒ぎで起きないなんて…
 エルザはどれだけ図太い神経、いや熟睡していたんだろう。






「どうしてクォークさんは怒っているのですか?」
「あぁ、ジャッカルがクォークをおs」
「やめろ」


 部屋から現れたクォークがエルザの言葉を遮る。


「ほら、俺のことはいいからさっさと食え!」
「わかったよ」
「今日も任務だ!各自支度しろよ!」
「へいへい」




 こうして謎を残しつつもいつも通りの一日が始まった。

 僕はようやくサンドイッチを口に運ぶ。
 今日もおいしい。










 



















※おまけ※




 目が覚めると、体が動かなかった。
 半覚醒の頭で考えてみると、俺の上に腕が乗っていた。


(…腕?)


 おかしいだろう。
 俺は一人で…


「んー」
「っ!?」


 ジャッカル!?
 耳元で…てことはこの腕もそうか。
 しかし何故同じベッドに。
 しかもこいつ、酒臭い。
 酔っ払ってベッドを間違えたのか?

 とりあえず起こそう。
 変な誤解が起きては、


「ぅ!?」


 急に体が反転させられ、口を塞がれる。
 ジャッカルの口で。

 状況が飲み込めない。
 しかしぬるりとした物が唇を這ったとき、ようやく身の危険を察知した。


「っ、やめ…」


 こいつ半目…起きてるのか?
 人違いしてるのか?
 俺はどこからどう見ても男だぞ。
 ジャッカルを押し返すと、今度は首筋に痛み。
 噛まれた。
 痛い、のに。


(なんで俺は────)


 嫌じゃないんだ。
 ジャッカルの手が肌を撫でる。
 それも嫌じゃない。
 でもこれ以上は、


「ジャッカル…っ」
「……ちゃーん」












 人違い。
 当然だ。
 それなのに、無性に腹が立つ。
 だらしなく口元を緩めて、ジャッカルが耳元で囁く。



「好きだぜ」
「なっ!?」
「…………あれ?……大将??」














「ってめぇ─────!!!」
































───────アトガキ──────

おまけの部分が書きたかっただけです(^ρ^)
ジャクォがあつい…!
クォークは素直じゃないと更に良し。

お付き合い頂きありがとうございました!



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