あなたのそばに02
「んっ…」
壁に手をついて、背後から伸びてくる手に身を委ねる。
師はどんな表情をしているのだろう。
壁ばかり映す目は最早何の意味もなさない。
服の下に侵入した手は筋と筋の間をなぞり、触れられた所から感覚が研ぎ澄まされていくようだ。
その剣を整備する時のような優しい触れ方に勘違いしそうになってしまう。
私もそれぐらい大事に扱われているのではないかと。
キシリ、再び胸が痛み始める。
「タシャ…」
「トリスタ様…そのように優しく触れないで下さい」
耳元で囁かれる声に腰が砕けそうになるが、私は心からの懇願をした。
ごつごつした指が胸に触れ、体が震える。
「何故だ」
「私は…っ、勘違いを、してしまいそうですっ」
「何をだ」
「っあ!」
胸の突起を指の腹で押され喉から女のような声が上がる。
自分にこんな感覚があると思わなかった。
恥辱に顔が熱くなり、目が潤んでいく。
「言えぬか?」
「ぁっ…ん!お止め下さい…!」
「止めて欲しいようには見えぬが」
伸びてきた手が顎を掴み、顔を横に向けられた。
真正面にある師の顔。
こんな情欲に浮かされた顔を見られたくない。
このまま消えてしまえればいい。
醜態を晒してまでそばに居たいと望んでいたのに。
今、この姿をどう思われているかを考えると正常ではいられない。
吐息が触れる距離で、師が私を見つめて口を開く。
「タシャ……何を勘違いしそうなのだ?」
「優しくされるとっ、ほんの少しでも…」
頬に涙が伝う。
泣こうとしたわけではないのに、勝手に流れ落ちていく。
泣くのは何時ぶりだろうか。
上手く動かない口を懸命に動かす。
「───トリスタ様に愛されていると、思ってしまいます…っ」
茶色の瞳がすっと細められる。
そして指先が唇に触れた。
「タシャ、感じないか?」
「トリスタ様…?」
「儂はお前を愛している」
「っ、お戯れを」
「何故信じない?儂が信じれぬか」
「違───」
口が塞がれる。
優しく唇を舐められ、再び手が体を這い回る。
その手は腹筋の割れ目を辿りズボンのベルトに掛かる。
「んぁ、お止め下さ…ぁ」
「怖いか?」
「な、やっ」
下着ごとズボンを下ろされ、下半身が露出する。
恥ずかしさに全身が熱くなる。
既に膨張していた自身を握られると、また口から高い声が零れた。
「あっ」
「タシャ…少し力を抜け」
「ひぁ、あぁ…っ!」
人に触られた事のないそこが師の手の中に。
慣れた手付きで私を追い込んでいく。
ガリガリと壁を引っ掻いて、襲い来る快楽に耐えようとする。
「あぁっ!お止め…ぇ…」
「もう限界か?」
「っ!あ、あぁ、んっ」
「一度吐き出せ」
「ぁ!?っや─────!」
絶頂を促す手に耐える事は出来ず。
脚をガクガクと震わせながら私は果てた。
しかし全てを師の手の中に放っている事を確認すると、さっと血の気が引いていった。
「申し訳ありませんっ」
「これは使うのだよ」
横にある師の顔が笑う。
いつもと同じ笑顔で安堵したのも束の間。
「やっ!?トリスタ様…っ」
「壁に手をつくんだ」
「しかしっ、んぁ」
粘り気のある指が後腔を湿らせていく。
何が起こるのかわからないまま、指示通り壁に手をついて体を支える。
「タシャ……ここに儂が入る」
「なっ…無茶です…!」
「力を抜け。心配するな…慣らすからな」
「っぁあ!お止め下さい!そこは───」
体が裂かれるような痛み。
実際に裂かれた時より痛みを感じる。
体内で蠢く何かの感触。
冷や汗が浮き出るのを師が拭って、再び胸の突起を摘み始めた。
強張る背筋。
快楽と苦痛とが混ざり合った声が口から落ちていく。
「あ……あぁ…っ…」
「痛むようだな……ここはどうだ?」
「……っや!?あぁっ!」
体内を掻き回す指が何かに触れた瞬間、今まで以上の快楽が体中を駆け巡った。
ガクガク震える脚。
立っている事すら困難になり、壁を押す手に力が籠もる。
「ここが良いようだな」
「ぁんっ!や、あぁっ、あっ、やめ」
師が半ば質量を増し始めた私自身を再び掴み弄ぶ。
両側から攻められて理性を手放しそうになりながら唇を噛んだ。
「んっ…トリスタ様ぁっ」
「どうした?」
「私は、も…どうすれば」
「……いい顔だな」
顔に血が集まる。
どんな顔をしていたのだろう。
体内を掻き回す質量感が増す。
まるで広げるように内壁を押していた。
焦らすように時折敏感な部分に触れられて体がビクビク震えた。
「あぁ、ふあ…」
「そろそろ入るぞ……良いか?」
「ぁっ…トリスタ様、にっ…委ねます…!」
突如指が引き抜かれると、今度は熱い何かが後腔に触れた。
そしてそのまま体内に入ろうとしてくる。
肉が裂ける感覚。
壁を掻くように指先に力を籠めて耐える。
「っんく…!」
「少し我慢してくれ。力を抜くんだ」
「あぁ…っ」
痛みに垂れ下がった自身を師の手が再び握り込み、優しく扱き始める。
再び快楽と苦痛が入り混じる。
しかし快楽の方が強く、感覚が麻痺したかのように痛みは無くなっていった。
「あぁっ、このままでは…っ」
「何度でも吐き出せばいい。ほら、全て入ったぞ」
「ひぁっ」
体内に入りきったそれが敏感な部分にあたる。
動いていないのに、ただ入っているだけなのに。
「暫くこのままで慣らそう」
「トリスタ様ぁ…」
師は私自身からも手を離す。
何もしていないのにビクビクと震える自身が恥ずかしい。
その原因は体内に入っているモノのせい。
もっと強い快楽を得られるはずなのに、その手前で焦らされる感覚。
全身に痺れが行き渡る。
「…タシャ、腰が動いているぞ」
「っ、これは…」
「こうして欲しいのか?」
意地悪くそう問うのが聞こえる。
トリスタ様はゆっくりと腰を動かし始めた。
しかしそれでは焦らされている気持ちだけが募って。
もどかしさに体が震え、涙が浮かぶ。
「あぁ…」
「どうだ?好きなように動いてみろ」
「は…い……」
躊躇いながらも、言われるがままに腰を動かし始める。
自分でこんな事をするなんて。
しかし既に恥じらいも影を潜め、私は速いペースで腰を振った。
求めていた快楽がゆっくり這い上がってくる。
「あっ、んんっ、あぁ…っ」
「…艶めかしいな」
「はぁ…んっ!?」
トリスタ様が私の腰を掴むと、激しく律動を始めた。
全身を駆け巡る快楽。
立つのが難しくなってきた私はその手に全てを託す。
「ああっ!…っく、ひ、ぁあん!」
「すまない。我慢できなくてな…っ」
「ぁん…も…っ!トリスタ様ぁ!」
「これで満足か?」
口からはだらしない嬌声が落ちるばかり。
喘ぎながら頷いて意思を示すも届いているかもわからない。
絶頂がすぐそこまで来ていた。
「────っあぁ!」
「く……っ」
白濁した液体がだらだらと流れ出す。
同時に体内で広がる熱い感覚。
膝が笑っている。
体が突如重さを増したよう。
「タシャ」
「ぁ、ん……」
唇が重なる。
ほんの少し触れるだけの口付け。
「トリスタ様…」
「儂の言葉、信じてくれたか?」
「……?」
頭がぼやけてきている。
倦怠感に襲われながらその言葉の意味を考えるが、よくわからない。
「申し訳…」
「愛している」
ぼやけた頭の中が突然晴れた。
行為の最中の、あの言葉。
「師としてではなく、だ」
「信じています」
「私も、あなたを────」
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トリスタ様にはデレデレだと嬉しい。
タシャが師としてではなく、トリスタ様と向き合った感じを表現したかったのですが…
色々すみません(´・ω・`)
すぐupできると思ったのですが、描写とかもろもろあれだったので手こずりました。
裏物は書く前の勢いで突っ走らないと大苦戦しますね(´`)
半脱ぎにロマンがある。
↑が私の伝えたいことです(笑)
お付き合いありがとうございました!
2012.6.6.
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[mokuji]
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