※ぬいぐるみにしか欲情できない部長くんの話











「頑張ってあちこち探してさあ、色んな子を試してみたんだけど、やっぱりこれが“いちばん鍵介っぽい”かなあって思ってね、外見も……中も」

とんでもない変態に目をつけられてしまったかもしれない。にこにこと笑う部長が片手に持つ「それ」から、鍵介はゆっくり目を逸らす。
「かわいいだろ?」
部長の声は不自然なまでに明るく弾んでいて、いっそ気味が悪い。彼が持ってきていたのは、薄いクリーム色をしたうさぎのぬいぐるみだった。目玉のある場所に嵌め込まれているのは、グレーのボタン。首には黄色いリボンが巻かれている。色素の薄い見た目は、部長の言葉どおり“鍵介っぽい”と表現してもおかしなものではない、が。
「た、試したって、なに……」
「ん?うん、俺、こういうことする人だから」
「……?」
外見も、そして「中も」という部長の言葉に、鍵介は引っかかりを感じた。すると部長はうさぎの腹にそっと両手を添えて、愛しいものを見つめるように目を細めて───そして、力いっぱいに引き裂いた。

「ひ、っ……」

びい、と耳障りな音をたててぬいぐるみの腹が破けた。引き攣れた布やほつれた糸の隙間から、ぽろぽろと綿がこぼれ落ちる。平素なら「ぬいぐるみが壊されている」と見たままの認識ができるはずなのに、最初に「鍵介に似ている」などと言われてしまったせいで、彼の手の中で自分が傷つけられているような錯覚に陥ってしまう。溢れ出した綿も、鍵介の目にはまるで臓物のように映り、変わるはずのないぬいぐるみの表情がぐにゃりと醜く歪んだ気がした。
「いやだ…………」
「ねえ見なよ、ほら、鍵介の中ふわふわで気持ちよさそうだよ」
「……な、なに……?」
「この子は今日が初めてだけど、これまで他の子でいっぱい練習してきたから大丈夫。鍵介がどこで気持ちよくなれるのかもどこが嫌なのかもちゃんとわかってる。どれだけ無茶すると腕とか取れちゃうのかも、ちゃんと勉強したよ」
「…………は……」
肩を抱いて震える鍵介の眼前に、腹を裂かれたぬいぐるみを突き出して、部長は楽しそうに笑っている。部室で雑談をしているときの彼の笑顔となにひとつとして変わらなくて、逆に薄ら寒い。

「ぬいぐるみを鍵介だと思って犯してるんじゃない。鍵介を、ぬいぐるみだと思って犯してる。わかるかな、わかんなくてもいいや、これからおれがいつも“鍵介”をどうやって愛してあげてるか教えてあげるから、ちゃんと見なよ、“鍵介”がお腹の中ぐちゃぐちゃにされて気持ちよくなってる顔とか、欲しがってるところとか、見てなよ、ぜんぶ、ぜんぶ」

とんでもない変態に、目をつけられてしまった。
無言で頷いた鍵介の瞳から涙が落ちるのを、うさぎの鍵介はぴかぴかのボタンの瞳でじっと見つめている。



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