悪ィ。寝ちまった×青峰

「あ?洛山高校も来てんのか…?」


今日の合同練習試合、いつもみたく近くの高校だけで試合するもんだと思ってたから広い体育館のとある控室の張り紙を見て驚いた。初めは見間違いか何かだろうと思って気にはなったがもう一回確かめようという気にはならずにそのまま俺たち桐皇学園の控室に向かった。
だくどそのあとまたもう一回その控室を通る機会がありふ、と見た俺は思わず二度見してしまった。その張り紙には目をこすっても何度見直しても“洛山高校”と書かれていた。たぶん、この世に二つとして同じ名前の高校はないはずだから…

……え、マジ?
俺はその扉の閉まった控室の前で立ち止まり、洛山高校と書かれた紙から目が離せずにいた。するとそんな俺の行動を不審に思ったのか前にいたさつきも立ち止まり振り返った。


「青峰くん?どしたの?なんかすっごくマヌケだよっ?」

「おい、何で洛山高校が来てるんだ?」

「え?あ、ホントだー!わざわざ京都から?じゃあ赤司くんに挨拶しなきゃねっ」


どうやらさつきもこのことは知らなかったらしい。
だけど、ホントに何で京都から東京になんて来たんだ?公式戦でもないんだし、わざわざ足を伸ばしてくるほどの試合じゃねえじゃん。まあでもどうせこの後会うんだろうしそん時にでも聞くか…
てか、今日俺だけじゃね?誠凛も海常も秀徳も陽泉もいねえ。…っしゃ!

俺は小さく腰あたりでガッツポーズをし、邪魔者がいないことを喜んだ。



「一試合目はワシらは××高校やなー…ほな、各自アップしてからまた集合かけるで」

「「「はい」」」


今吉センパイはそれだけ言うと監督んとこに行った。体育館はそれなりにデカくて、一気に三チームが試合できる。俺たち桐皇は真ん中のコートでアップをし始めた。俺は周りをキョロキョロ見回して赤髪を見つけようと思ったが、どうやらどこにもいないらしい。かなりの数の強豪校が集まれば背がデカい奴は大量にいるわけで。割と平均身長な赤じゃ埋もれちまっても仕方がない、か…

それからボールを使っての練習となったとき、見覚えのあるジャージをきた選手を数人見かけた。背中に書いてある高校名を読めば“洛山”と記されていた。
だけどその中にも赤司の姿はなかった。


「青峰、さっきからキョロキョロしてどないしたん」

「あ、いや人探してる…!」

「お?」

「久しぶりだね、大輝」


ボールを手に持ったまま未だキョロキョロしていた俺に話しかけてきたのは今吉センパイ。何故そんな事をしているかと理由を述べようとしたときに、俺の目に飛び込んできたのは。
見覚えのある赤い髪。見下ろすほどの俺からすれば小柄な身長。聞き覚えのある声。そして、そして…名前呼びっ!

自分のすぐ後ろにいる赤司に気が付いたセンパイは少し驚きながらも胡散臭い笑顔を見せながら消えていった。


「さきほどから辺りを見回していたようだが何か探していたのか?」

「特に。つーか、なんでお前がここの練習試合に参加してんだよ」

「悪いか?まあ、なんだっていいじゃないか。当たったらよろしくな」

「おう」



それから何回か練習試合を重ねた俺たちはこのあとはもう試合がないということで控室に戻ることになった。
…正直、洛山との試合のことは思い出したくねえ。

廊下を歩いていると、洛山高校の控室の扉があいてることに気が付いた。少しだけそっちに目線をやると中にいるのは赤司だけみたいだった。今日は朝以来ろくに話もしてねえから寄ってみることにした。


「赤司ー」

「…ん、だ、大輝か」

「何してたんだ?」

「い、いやなんだか少し疲れているみたいで」


控室に置かれている長椅子に座り壁にもたれかかりながら目を閉じていた赤司。どうやら少し仮眠をとっていたみたいだ。瞼は重たそうであのキリっとした目じりは見当たらない。
「起こして悪いな」そう言って赤司の隣に俺も同じようにして腰かけた。なにを話すわけでもないがなんとなくこんな時間が気持ち良い。隣から汗に混ざって微かに香る赤司のにおいに、また再び眠りに落ちてしまったのか規則正しい寝息が聞こえてきた。するとだんだん俺の瞼も重みを感じだして…




「あの…」

「どうされました?」

「桐皇の選手がうちの控室にいて寝てるんですけど」

「…え?」


洛山高校の選手が私たちの控室に来て声をかけてきたものだから、何事かと思ってそちらの控室まで足を運んでみればそこには、ユニフォーム姿のまま寝てる赤司くんと青峰くんの姿があった。
二人は恋人みたいに赤司くんは青峰くんの肩に頭を乗せていて青峰くんはその赤司くんの頭に自分の頭を乗せていた。

桃井さつきはそんな二人の姿を正直すごく可愛いと思ったがこのまま放置するわけにもいかないので渋々声をかけた。



「青峰くんっ」

「青峰ー」

「征ちゃんっ」

「あっかしー!」

「ん…っ?」

「あー…?」


どうやら俺はあのまま赤司と寝てしまったみたいだった。

帰りにさつきはずっと「写真撮っとけばよかった!」と嘆いていた。
今度はいつ会えるんだろうか。










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