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    季節は秋のはじめ。この季節の雨は降りだすと気温が下がってどうにも寒くなる。体感温度としてはもう冬といった感じがする。すこし薄着できてしまっただろうか、その寒さが身に染みる。へっくしょん!と、女の子らしさのかけらもないくしゃみをしてしまうと後ろから声がかかる。


    「ずいぶん女子力の低いくしゃみだな?」
    「レオリオ!」
    「わるいなナマエ、傘持ってきてくれたんだろ?」
    「私、朝ちゃんと言ったのに」
    「だから悪かったって。あーあー、こんな身体冷やしちまって」


    レオリオに黒いおっきい傘を渡してもう一度あの女子力のないくしゃみをしたらレオリオが私の肩に触れた。軽く雨にも濡れていたのかひどく冷たくなっていたようでその冷たさに驚かれた。


    「これ羽織っとけ」
    「わ、っと。でもそれじゃレオリオが……」
    「俺はこっちのコートそのまま羽織れば……ほら、大丈夫だ。早く帰ろうぜ」


    レオリオは自分の着ていたスーツのジャケットを脱いで私の肩にかけてくれた。彼の貸してくれたそれに袖を通すと、すごくぶかぶかだ。軽くまくって、なんとか指先をだす。レオリオが先ほどまで着ていたからまだ、あたたかい。冷たかった身体にじんわりあたたかさが広がって、思わず笑顔になる。


    「帰ったらあったかいコーヒーいれなきゃ」
    「あー……じゃあ、ケーキでも買っていくか。コーヒーのお供に」
    「わーい!じゃあ私ガトーショコラ!」


    そうして花柄の自分の傘を開いて、先を歩くレオリオに追いついて2人で帰り道にある馴染みのケーキ屋さんの話をしながら帰路につく。はやく家にかえって美味しいガトーショコラとコーヒーで温まりたいと帰宅後の楽しみを考えると滅入っていた気分が、すこしだけ明るくなった。


    ……雨も悪くないかもしれない。



    (ガトーショコラが待つ end)




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