禍々しくも鮮やかに煌々と光る、その色はピンク。ネオンが誠の頬を照らしている。その色相とは正反対に誠の表情は冷たく、怒りすらあらわにしているように見えた。

私は思い切り絡めていた腕をするすると、でも少しずつ少しずつ離した。一気にばっと手を離してもよかったのだけれど、それは違うと思ったから。わたしは別にやましいことなんてしていない。わたしの手が完全に離れると同時に強く引っ張られ、つんのめるように誠の胸にぶつかった。

「何してるの」

その問いかけは、私に対してなのかそれとも私がつい数秒前まで腕を絡めていた男になのかはわからなかった。お酒が脳を蝕んでいる。善悪の判断がつかないところまでアルコールを入れていてよかった、と呑気に思った。

「いい大人が、女の子をこんなに酔わせて……」

べろべろのわたしの腕を掴む力を強めながら、誠は目の前の男を睨んだ。でも、その人は悪くなかった。さっきまでやっていた合コンで今日初めて知り合った人。どちらかといえばわたしが誘った。8こも歳上の男の人。どことなく誠に雰囲気が似ていたその人。

「べつに……」

その人は面倒くさそうにため息をついた。

「こいつから誘ったなら申し訳ありません。どうか今回は見逃してください」

誠が頭をさげる。わたしには意味がわからなかった。色々な事実、感情、憶測が錯綜している。考えようにもまるで収拾がつかない。わかったのは目の前の男の人が私たちに背を向けて歩きだしたということだけだ。目の前に見えていることしか理解できない。

「せ、……い」

「行くよ」

その声は怒っていた。たぶん。わたしを支える腕は優しいけど優しくなかった。どうしてわたしは誠に阻まれたのかわからないまま車に乗せられる。これが誠の車なのかはわからないけれど、誠は運転席に座ってエンジンをかけた。

遠のいていく意識の中で、まだ誠に結婚おめでとうといえていなかったなあとぼんやり考える。

おめでとうって言えたら、またすこし前に進める気がする、と根拠のないことを思いながら。

「誠、けっ……こん、……結婚おめで……」

最後まで言えずに、わたしは意識を手放してしまったみたいだった。

ああ、………。

でも誠、幸せになってね。








「そんなこと言うなよ、可奈」


ぽつり、苦笑いとともに零した誠の言葉はわたしには聞こえない。


to be continued.....
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