梟 君との別れからどれだけ経っただろうか。 他と付き合っても、長続きはしない。埋めたい穴が埋まらない。君に似た人は君じゃなかった。髪も目も声も唇も、君じゃない。 やはり、いつもどこかで君が僕の中をノックしているのだ。いや、それはひとりよがりで、僕が僕の中の記憶の君を叩いているのか。 どちらにせよ、それを享受してここまで来ている。 都会から少し離れたこの町で、ふと、夜、歩きたくなった。 眠れないことが増えた。 雨のせいかビニル傘越しに、星は、見えない。 目を閉じればちらつく君の姿にすがりたくなる。君の記憶がどんどん薄れていくのが分かる。それを閉じ込めるためにきつくきつく目を閉じる。まだ、まだ、だめだ。すがる。 携帯に残った君のアドレスはまだ生きているのか。君と僕を繋ぐのか。それさえわからないまま、メールを打っては消す。 さながら儀式のように幾通も想いを綴り、具現化された想いはかわいそうに、指一本で消え去る運命だ。そろそろ、終わりにしなければと思いはしても明日にはどうせ。 いっそ夢でもいい、と思う。 君との未来を想像して、君の残像を部屋に探す。 女々しい。ひどく女々しい。 君の隣に僕はいなくて、僕の隣に君はいないというのに。 僕が、誰かよりわずかでいい、幸せになるためには、君が必要なのに。そのはずなのに。 早く、どうか、できるだけ早く。 この胸に君が忘れていった君の声を持ち帰って。 back |