バニティバニー




携帯だけが夜の闇に浮かぶ。
返信に震えるのを待って握りしめている。
さみしがりやのうさぎは、本当に死ぬのだろうか。
さっきまで続いたメールを無表情で読み返す。
ねえ、これで終わるの?
いつ捨てられてもおかしくない。
君との間に名前のついた関係はない。
メールの間隔が妙に空いている。
たぶん、返信は、来ない。
青白く顔を照らす携帯を閉じる。
放るようにテーブルに置いて寝転がる。

闇だ。
画面の残像が目の前をちらつく。

うーっ、と唸るような音がする。
携帯のバイブレーション。
小さな照明が点滅する。

予想以上に長く響く音にはっとして、置いた携帯を引ったくるように引き寄せる。

「もしもし、寝てた?」

寝てないよ。

「そっか、ならよかった」

安堵した声。
うさぎは死期を未だ延ばされている。





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