間抜けに鳴くのだ




鳩が飛んだ。
この狭い町の何処に彼らは巣食っているのだろうか。
大量の鳩が、飛んだ。

僕は、夕焼けを横切る彼らを眺めながら目を細める。
赤が眩しい。

「そろそろ、帰ろうか」

君は僕の視線を辿って、呟くように言った。
明日の仕事も早いと聞いた気がするから、素直にそれに頷く。
足早になる二人の距離は一定だ。

「鳩は嫌いだよ」

ふいに、君が言う。
理由が分からなくて首を傾げると、追うように説明を加える。

「自分が人に殺されないと思って我が物顔でのさばってるのが、嫌いだよ」

鴉の方がよほどいい、と凝った首を音を鳴らして回しながらそう言う。
鴉はゴミを漁り、鳩は人から餌を享受する。
鳥の世界では、どちらが勝ち組でどちらが負け組なのだろうね。

「勝ち負けなんて本当はね、何処にも無いんだよ、馬鹿だね」

むっとして隣を見ると、柔らかい顔で微笑んでいたから文句を飲み込む。
夕暮れは早々と夜に変わろうとしていて、鳩の羽音はとっくに聞こえなくなっていた。





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