僕らの銀色




「白いよ」
美原は再会早々不満げに言う。
「当たり前だろ、こちとら雪国なんだ、なめんな」
「うるせー、さみーぞこのやろう」
文句ばかりの女の口をどう封じてやろうか考えていると、美原は口を尖らせて、早く行くよと僕の手を引っ張った。
気まぐれすぎる。
真新しい美原のブーツが、明け方積もったばかりの雪に足跡を残す。
「寒い!」
「雪国の冬が暑くてたまるか」
「…ひねくれすぎでしょあんた」
「自覚はしてる」
呆れた顔をされた。
美原は僕の手を掴んだまま前を歩いている。
「なんだって私がこんな寒いところに」
「じゃあ来なきゃ良かったのに」
「馬鹿じゃないの」
「はぁ?」
美原の顔が見えない。美原は黙って前をずんずん歩いていく。そりゃもう、ずんずん、という表現が正しく聞こえる程、ずんずん。
「…美原?」
「あんたがいるから、来たんだから、そんなこと言わないでよ」

彼女の頬が、雪に良く映えていたから、僕は美原の冷たい手をゆっくりと握り返した。



企画サイト「Coopere」様に参加させていただきました!
お題「銀世界」





back


- ナノ -