例え、
世界に追放されても
ミミ様 沖神
これから、少し前の話をしようと思う。それは、そう遠くはない数年前のこと。
* * *
先日、俺はチャイナに告白をした。告白っていうのは世間でいう愛の告白だ。チャイナのことはもうずっと前から好きだった。チャイナも俺のことを好きだと思った。こんなことを言ったら、自意識過剰と言われそうだが嘘ではない。なんとなく、そう思っていた。良い雰囲気になったことはなくもない。そして、先日いつものケンカが終わった後に伝えた。だが、チャイナの答えは俺が想像していたのとはるかに違った。俺のことは好きだけど、俺の気持ちにゃ答えられない。自分には…と言って、去っていったのだった。それからどうしたものかチャイナに避けられている気がする。こんなことを思いだしたら、土方さんを殺りたくなった。
「という訳で土方さん殺っていいですか」
「何がという訳だっ。意味が分かんねぇし。」
「いや、なんとなく」
「なんとなくでバズーカこっち向けんなっ!!ったく、そういや近藤さん知らねぇか」「いや、知りやせん。姐さんの所じゃないんですか」
「悪いが総悟、探してきてくれねぇか」
っち。面倒くせぇ。あっでも近藤さん探すついでに旦那ん所でも寄ってチャイナの様子でも見にいくか。避けられてるのもイラつくし。
俺は重い腰を持ち上げ、近藤さんを探すのを後まわしにし、万事屋へ向かった。
「旦那ぁー。失礼しやす。近藤さんいやすか」
誰の返事もない。取り敢えず、ドアが開いているので開けて、中に入ってみた。旦那と誰かの声がする。俺は耳を澄ませて、会話を聞いた。
「はぁ。神楽が婚約っ!!」
…!!気づいた時には俺は旦那と知らない親父の前にいた。
「それ、詳しく聞かして下せぇ」
「誰だ。お前はっ」
「まぁまぁ、お義父さん。で、総一郎くんはいつからいたの」
「誰がお義父さんだっ」
どうやらこの親父はチャイナの親父らしい。つまりは、俺の未来のお義父さんになる人だろう。
「いや、さっきです。それより旦那、チャイナが結婚って」
「…聞かれたなら仕方ねぇ」
それから俺はそのことについて聞いた。まず、夜兎族は14、15歳から結婚を許されているらしい。だが、同族以外との結婚はご法度。そして、チャイナは八つも歳の離れた夜兎族の野郎との結婚が決まっているらしい。これはチャイナの意思でなく、周りの夜兎が決めたもの。もし、これに背いたりでもしたら、チャイナの親父や旦那達にまで危害を加えるらしい。そのことから、チャイナは好きでもないのに嫌々ながらもそれを承諾したらしい。だからか。そして、俺は正座をして頭を伏せた。
「旦那、チャイナの親父さん。俺にチャイナ…神楽を下さい。好きなんでさぁ。まぁ、フラれやしたけど」
自分が何を言ったのか分かっている。もし、これでチャイナをくれると言ってチャイナが承諾したら、きっと相手は旦那達に危害を与えてくるだろう。頭をあげられずにいると足音とともに声がした。
「万事屋。それは俺達も頭を下げる。末の弟分が珍しく熱いからな」
「土方さんっ。と近藤さん」
そこには、何故か土方さんと近藤さんが立っていた。
「総司が珍しく熱いんだ。もちろん、何かあったら星海坊主さんや万事屋達のことは俺達、真選組が守る。それにチャイナさんの気持ちも汲んでくれ。このとおりだ」
そう言って、近藤さんは二人に向かって頭を下げた。
「おいおい。ゴリラ達まで聞いていたのかよ。もちろん、神楽が総一郎くんのことを好きなのは何となく知ってたよ。まさか、総一郎くんも気があったとは知らなかったけど。俺も神楽のこんな結婚は反対だしな。どうする、お義父さん」
「おい、小僧。」
俺はビクッとした。そこからのことはよく覚えていない。覚えているとしたら、チャイナが俺のことを本当に好きで、あの結婚が嫌なら二人でどこか遠くに逃げろと。
* * *
「チャイナ」
「っ!お前、何しにきたんだヨ」
チャイナは公園でボケーっと座っていた。ここまで走ってきた俺は息を整えた。
「チャイ…神楽、俺と一緒に逃げやしょう。話は全部聞いた。でも、好きなんでィ。生憎、Sは諦めが悪いんでね」
「でも…」
「旦那達なら死にやしねぇ。んな弱いことある訳はありやせん。それは、あんたが良く知ってるだろ。神楽のことは一生護ってやる。愛してるんでさァ」
自分の気持ちだけを押し伝えた。
「…うん」
その時、涙を目に含んだ神楽を今でも忘れられない。俺達は必要最低限のお金と荷物だけをもって江戸、そして地球を出た。
後悔なんてしてない、むしろ良かった。今じゃ、可愛い息子と娘がいるし、何より愛おしい妻がいる。もし、悔いがあるとしたらあの時近藤さんと土方さん、旦那たちに別れを告げなかったことだろう。
2013.01/28
大変遅くなりましたっ。申し訳ないです。
遅くなってしまった上に、私の能力では上手く表現できず、シリアス風味の沖田さん語りの過去話になってしまいました。
亀更新ではありますが、また足を運んで下さると光栄です。