雨が止まない。本日の天気予報の降水確率は30%と低めだった。なのに、なぜ雨が降っているのだ。半分以下の確率だったから雨は降らないだろうと思っていたのに。こんな雨の日は、見回りをする気が失せる。と思いながら土方はタバコを吸って煙りを吐いた。

書類に目を通そうと見たのだが、何もする気もなく一度手に持った書類を机の上に置いた。見回りに行くといっても雨が降っているせいでそんな気にもならない。だが、何もしないのは性にあわなかったのか立ち上がり、山崎を探した。だが、山崎はこの雨の中、既に見回りに出ていたのだ。


さて、どうしようと土方は少し迷ったのだが、すぐに車のキーを取り出しパトカーに乗った。歩いて回るのは面倒臭かったのだろう。





パトカーで徘徊するものの、雨のせいか外に出ている人は少なく事件という事件は起きてはいないようだ。信号待ちの交差点で一息ついた土方はたまたま自分の隣のガラスの窓を見た。見てみると、女の子が傘も持たず雨にうたれながら、じっと空を見ているではないか。不振に思った土方は信号が青になったのを確認してゆっくりとパトカーで少女に近づいた。声をかけてみようと思い窓を開けると土方は驚いた。知っている顔ではないか。万事屋のチャイナ娘だ。何故、傘もささず雨にうたれている。何故、切ないような表情で空を見上げている。そんな疑問を抱きながら、声をかけたのだった。



「おい。そこのチャイナ娘。風邪ひくぞ」


息なりの土方の声にビクッと肩を震わせ、神楽が振り向いたら、パトカーの中から顔を出した土方がこっちを見て、中へ入れとでも言ってるようだ。神楽はしぶしぶパトカーに近づき迷いながら助手席に乗り込んだ。




「何やってたんだ」


土方はたまたまパトカーの中にあったタオルを神楽に渡した。神楽はそれを受け取り軽く身体や頭を拭いた。



「個人情報アル」

「ガキに個人情報があるかよ。雨なんかに濡れて風邪でもひいたらどうすんだ」

「いいアル。風邪ひいても。雨嫌いじゃないから」


予想だにしない答えに土方はシートベルトをしている神楽を見た。神楽の碧い瞳は窓の外を映したままだった。シートベルトをしたのを確認して土方はハンドルを握った。二人だけの車内。何だか気まずい空気が流れる。「にしても雨が嫌いじゃないなんて。珍しいな」

「お日様と違って、私を敵にしないから」


そして、また無言が続く。お日様と違って敵にしないとは夜兎の性質を言っているのだろう。太陽の日差しが天敵な彼らにとって日中は番傘がなくて外には出られない。それと違って、雨ならば完全に空は曇っていて外には出られると言うことだ。



「…もうすぐ万事屋着くぞ。降りる準備しろ」

「はーい」

「帰ったら風呂しっかり入れよ。風邪ひくからな」



土方が言うと神楽は、何か銀ちゃんみたいアル。と笑いながら言った。子供のような無邪気な笑顔に土方はふっと小さくそれに連れ笑った。間もなく、パトカーは万事屋の前に着いた。



「ねー。マヨラー」

「誰がマヨラーだ。土方だ」

「また、雨が降っている時に私を見つけたら乗せてくれる?」

「あぁ。でも何で」

「んー。分かんないネ。だけど、マヨラーの隣いると落ち着いたアル」



そう言って彼女はバイバイと言い残し、足早にパトカーから降りた。頭を少し抱えてタバコに火を付けた土方が、数週間後、土方はまた雨の日にずぶ濡れになった彼女を拾ったのだった。





2013.01/28



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