▽3Z 銀月要素あり
月詠は先生
初恋は叶わない。なんて言葉を聞いたことがある。まさしくそうだ。皮肉にも私が好きな人は担任だ。普段はぐうたらでやる気のないくせに、いざというときはクラスのどの男子より助けになる。実際に何回も救われた。だけど多分。それは私が生徒だったからだ。
「そういえば、坂田先生と月詠先生。明日結婚式挙げるんだって」
「知ってる。坂田先生、絶対に月詠先生に尻に敷かれるよね」
「あはは。言えてる。」
隣のクラスの子たちの会話が嫌でも耳に入ってくる。そんなの聞きたくない。だけど、銀ちゃんが来週にツッキー先生と結婚式を挙げるのは事実だ。ツッキー先生は嫌いではない。むしろ大好きだ。優しいし美人さんだし、面白い。
私は二人が結婚を発表する前から、二人が付き合っていたのは知っていた。だって、銀ちゃんの視線の先はどこを見ていてもツッキー先生なんだもん。だけど、どこかで期待しちゃていた。今、思うと少し馬鹿馬鹿しい。先週、銀ちゃんの口からクラス全員に結婚するって聞いた時。みんなが騒いでる中、私はやっぱりか。と思った。そして、何かが崩れた気がした。祝福を祝う教室から一刻も早く出たかった。だから、逃げ出した。誰にも気づかれないようにそっと。
「あーあ。女々しいアルな」
そんなことを思い出しながら、非常階段で鏡を開き自分の顔を見ると涙目だ。こんなことなら恋なんて知りたくなかった。明日、銀ちゃんは結婚する。その前に私はこの叶わない恋を終わりにする。今日中に。
私は、いつもの瓶底眼鏡をかけて職員室に向かった。職員室はいろんな先生から祝福を受けている銀ちゃんとツッキー先生。幸せそうな二人の表情。涙が出そうなのを我慢して、私は職員室のドアを開けてゆっくりと二人の所へ行った。
「二人とも、結婚おめでとうアル。銀ちゃんツッキー先生を幸せにしろヨ。何かあったら承知しないからな」
笑って言えてるだろうか。二人は少し驚きながら、私を見てありがとう。と言った。そんな嬉しそうな表情で私の頭撫でてこないでよ。忘れらんないじゃん。だけど、二人が幸せなら。何故か辛いけど私は満足だ。
職員室を出て、何故か溢れてくる涙がとまらない。きっと酷い顔だ。将来いい女になって銀ちゃんを後悔させてやる。次こそ良い恋してみせる。私はそう思い屋上に行き、瓶底眼鏡を捨て、両サイドの御団子ヘアーを取り、髪をおろした。
いい男なんて沢山いる。次は楽しい恋をしたいな。高校生らしい普通の恋。こんな恋はもう懲り懲りだ。だけどね。初めて好きになった人が貴方で良かった。
群青色の綺麗な青空を一瞬だけ見て。私は笑って教室へ戻った。
サヨウナラ初メテノ恋。
そして、
コンニチハ次ノ恋。
2013.01/28
グッバイ初恋