沖→神
真選組一番隊隊長。近々、土方さんを降して、真選組副長になる予定だ。自分で言うのもアレだが、自分の容姿に少なくとも不満はない。金に困ったこともなけりゃあ、女に困った記憶もない。そんなこと言ったら芋侍のくせに何を言っているんだと思われるだろうが、本当のことなのだから仕方がない。
悩みなんなんて一つもない。
と言いたいとこだが、残念なことに最近一つ非常にややこしい悩みが出来てしまったのだ。
「なー。酢こんぶ奢れヨ。税金ドロボー」
原因はこのピンク頭でちっこい、アルアル口調のチャイナ娘だ。
「おい、無視すんなヨ。酢こんぶ奢ってくれるって言ったから着いてきたのに駄菓子屋通り過ぎてるアル」
「うるせぇな。少し考え事してただけでィ。金やるから買ってこい」
「持つべき者は税金ドロボーアルな」
「誰が泥棒でィ。さっさと買ってこい」
俺はチャイナに小銭をいくらかやった。チャイナを懐かせるのは、食べ物でおびき出す。この方法が一番手っ取り早いだろう。現に今だってそうだ。
懐くまでとはまだいってはいないが、会ってすぐ喧嘩は減った。減ったというより最近じゃあ、会ってすぐ奢らされるというのが正しいだろう。そのせいか、金が減るのが早くなった。ん、これじゃあ駄目じゃねぇかよ。
「ったく、どうしたもんか」
「何がどうしたアルか?」
これはこれは、俺がやった金でご満悦そうに酢こんぶを食べてやがるチャイナ。明日もこいつに少しでも好かれるよう、酢こんぶの金をやるんだろうな。俺は。
「あー。なんでも」
「ふーん。ありがとうナ」
「何が」
「酢こんぶ」
チャイナは好物であろう酢こんぶを食べながら、俺に上目遣い(ただそうに見えるだけ)で言ってきた。チクショー。これじゃあ絶対、明日だけでなくコイツが俺に懐くまでまたおごっちまうじゃねぇか。
2012.09/23
金喰い娘と貢ぐ少年