gift | ナノ

 ごちそうさまでした。

最低なシズちゃんと、臨也さんの瞳を食べちゃった六臂ちゃん。
どちらもそのままの意味なので、苦手な方はご注意下さい。







だいすき、だった

だいすき、だった

ほんとうに


砂糖を溶かした甘い紅茶のように赤茶色に透き通った瞳が、自分を映して揺れる瞬間が


「…………えっと、シズちゃん……いるんだよね?」

目のラインに包帯を巻いて、臨也が新羅の手を掴む。

そうだよ、と答えた新羅に、臨也が不思議そうに首を傾げる。

なんで

なんで

なんでこんなことに、なったんだ



『シズちゃん、あのさ、シャツ、洗濯……したから』

俯いた臨也の、言いたかったことくらい分かってた。それを言わせたくて、その顔がみたくて、わざわざ何度もキスをねだってみせたのだから。

ありがとなと頭を撫でてやると、泣きそうになりながらそれでも嬉しそうに目をきらめかせた。

そこまでしても、自分に縋る臨也が愛しかった。

また頼むかもと髪を弄ぶと、躊躇うようにくちびるが震えて、それでも臨也は『俺でいいなら』と頷いた。

あ、キスしたい

思ったけど、我慢した。

愛されてる、なんて思われたら困る。

声を出せないように、手のひらで唇を塞いで、寝起きだったから、何の用意もしないで。

きつかったけど、臨也は泣いていたけど、それでも最後に抱き締めたらまた縋りつくように抱きしめ返してきたから、これでよかったんだと思った。



「シズちゃん、気持ちは分かるんだけどさ……ほら、俺怪我人じゃない?しばらく新羅に観てもらうだけだから、そう怒らないでよ」

臨也らしい、飄々とした話し方に妙な違和感を感じた。特徴的なこの話し方は、一度うぜぇと舌打ちしてから自分の前ではしなくなった。

なんで、俺に話し掛けながら新羅の手を掴んでるんだ?

苛立ち、よりも純粋な疑問だ。

その手は、自分に縋るためだけにあるはずなのに。

「まぁ迎えが来たら、すぐに帰るよ。まだ見えない生活には慣れてなくてね。彼がいないとなにも出来ないんだ。」

彼、

彼?

いま、なんて言った?

迎え、と聞こえた。



「臨也、お待たせ。」

鮮血のような、鮮やかな赤。

あまりに印象的な瞳に遅れて、臨也と同じ姿形をしていることに気付く。

なんだ、これは

まっすぐに臨也に向かって、新羅を掴んでいた手に触れる。

それだけで、臨也の纏う空気が変わった。

「待ってたよ。遅かったね」

「ごめんね。はやく終わらないかなぁって臨也のこと考えてたら、もう終わってる時間だった」

「なぁにそれ、かわいい」

そいつの手をとって、腰を上げる。

やわらかい微笑みに、新羅がちらりと自分に目を遣ったのが分かった。


声に、ならない



『明日、会えるの?』

自分の腕を枕にして、嬉しそうに顔を綻ばせる。

これ、壊したら可愛いんだろうなって
また、泣くのかなって
俺のために、傷ついてくれるのかなって

楽しみに、してたのに。

電話は繋がらなくて
事務所には誰もいなくて
臨也の匂いは消えていて

『折原くんが、来てるんだ』

そう言われて、ドアを蹴破ったあともそこに臨也がいると信じられなかった。



ないはずの瞳が、赤い瞳を見つめてとろけてる

なんで、なんで

それは、俺のものなのに


「シズちゃん」

同じ声で

でも、これは臨也じゃない

顔をあげた先の赤い瞳が煌めいて発光する


「ごちそうさま、でした」

「ッ、」

「っ静、セルティ!!!」

黒い影が、自分の腕を、脚を、首を縛る。それを引きちぎってでも、手を伸ばそうとした。

殺さなきゃ

こいつは


臨也の肩を抱いて、愛しげに目を細める

だめだ

だめなんだ

愛してしまう

臨也が、

だってこれは、この、顔は


(嬉しいと笑った、あの日の)

なんで

なんて




間違っていることくらい、
ずっと分かってたのに




end


抱えていた想いごとぜんぶ、
おいしくいただきました。


おまけ



「六臂、ごちそうさまってシズちゃんになにかごちそうになったの?」

「うん。とっても美味しいもの」

「……女の子、紹介してもらったとか言うんじゃないだろうね。」

なにも見えない自分の肩を抱いて、六臂がたぶん笑った。

ずいぶん、ひどいこともされてきた。

好きだと言ったのは六臂が先だったのに、俺が六臂を好きになったとたんに見せつけるように他の女の子に手を出し始めて、責めることが出来ない俺を愉しそうに弄んだ。

縋るように瞳を差し出した俺に微笑んで、
傷を癒してもあまるくらいめいっぱい愛し続けてくれている六臂のこと
本当はもうとっくに赦しているのだけれど。

困ってくれる六臂が大好きで、ついいじわるを言ってしまう。

「臨也が愛してくれてるのに、そんなことしないよ」

「してたくせに。わざわざ呼び出して見せつけられたときは、流石に傷ついたんだからね」

「……あのときはね、ばかだったんだよ。もうしない。ぜったいだよ」

そう言って、冷たい手が頬に触れる。

あ、キスされる

包帯の下で瞼を閉じると、期待通りにやわらかく唇が重なった。

じわりと、
胸が苦しくなる

あのときこうしてくれていたら、きっと

きっと?

疑問符が頭を過ぎる

きっともなにも

今こうしてこんなにしあわせなのに


「いざや、愛してるよ」

「うん、俺も」


「……あいして、」


あれ、六臂って


(こんなに、小さかったっけ)


捧げたはずの瞳が、
涙に滲んだような気がした




おまけ おわり


2013/05/07

ぜんぶまとめてわしゃもじさんに捧げます。

ほんとは流石にいくらなんでもかなと思ったのですが、わしゃもじさんなら許してくれる気がしました。……地雷とかイメージぶっ壊しじゃねぇかだったらごめんなさい……。そのときは優しくスルーしてあげて下さい。

ろぴ臨ちゃんに目覚めさせて下さってありがとうございました…!
わしゃもじさんらぁぶ!




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