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 痛いよ


ねぇ、君は知ってるかな

俺が君の作ったケーキを食べておいしいと言うと、
君はよかったと笑って、
それから

窓に目を遣って、一度だけ、まばたきをするの。


「臨也さん、」

「ん、なぁに?」

どこをみてるの


柔らかい笑顔が自分のために作られる。

聞かないよ、言わないもの。

でも君は、知ってるのかな。
俺が気付いてるってこと、
君に俺の前の人がいることに。

気付かないくらい、
バカな奴だと思ってる?

うん、そうだよ。
俺はバカなんだよ。

鈍感な振りをするのがこんなに辛いのに、
君に聞けないんだ。


「ん……ふ、ふふ、デリック、なぁに」
「臨也さん、おいしかった。ほんとに、とっても」
「ん、うれしい、ありがと」
「臨也さん、ほんと?ほんとに、うれしい?」

俺に、言われて、嬉しいの?

額にキスして
頬にキスして
触れようとした唇が、優しく弧を描く。

もちろん

こんなに優しい声は、
きっとこの世で君しか
俺に優しい嘘をつく君にしか奏でられない

「君のために、作ったんだから」

ケーキを食べない君は、
いつも紅茶の味がする。

そのまま軽い躯を押し倒して
柔くて白い肌に指を滑らせると、鈴のような音が鳴る。

触れるたびに、撫でるたびに震える躯。

自分を見上げて、潤む瞳。

ねぇなんで、これが俺だけのじゃないの。


繋がって、細い指で爪を立てて、旋律のような嬌声で愛の言葉を繰り返す。

なんで俺は、君を疑わずにいられないの。

こんなに愛しい君を、なんで探ってしまうの。

こんなに愛してくれる君に、なんでもっとを求めてしまうの。

君がいればそれでよかったのに
君がいま、俺を映してくれていればそれでよかったのに

君が笑ってるなら、それでよかったのに

「デリック、ねぇ、デリック」

「すき、すきだよ、だいすき、きみが、ねぇ、デリック」


「きみのことだけ、だいすき、なんだよ」


涙が零れる。

ねぇ、ごめん、ごめんね。

俺はだめな奴になってしまった。

君がくれる優しい嘘より、
ほんとの言葉で傷つきたいんだ。

愛してるのに、
最初よりもっと
愛してるのに、

君がいてくれるだけでよかったのが、
君のぜんぶをくれないと耐えられなくなってしまった。

これは、もうひどいエゴイズムで
きみにとっての愛でなくなってるかもしれない

でも、わかって

これだけはほんとなんだ。

俺は君が好きで
痛いくらい好きで
掛け替えなく好きで
大好きで

だから、いいよ。

今じゃなくて、いいよ。

これからも、
きっと君が厭きるまでずっと
ずっと俺は君をこうして愛するから
愛し続けるから

いつか呆れた君が、
もういいかと吐き出してくれるまで

ひどいエゴイズムを、
君に押しつけ続けるから


「俺も、好きだよ」

「臨也さんだけが、ずっと、大好きだよ」

なけなしの笑顔で口付けると、
泣きそうな顔で君が笑う。
俺の、瞳に、
ほんの一瞬

俺のしらない、誰かを重ねて。



(ねぇ、痛いよ。)




end

きよしりゅうじんさんのでした。

わしゃもじさんに捧げます。



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