よん


ノミ虫が俺の指に指を絡ませた

振り向いた俺は目を細めていた

ノミ虫がすっと俺に寄り添った

俺は


臨也は








ガァン!!!!!!


「………………」

「………またか」


起きると今日は目覚まし時計が壊れていた

ここ一週間、毎日起きたらなんかが壊れてる

昨日は蹴飛ばしたらしくベッドの右脚が折れていた(とりあえずガムテープとボンドで直した)


今日も最悪な目覚めだ

脳裏にはこの世で一番

唯一

殺したい、気に食わない野郎の





(見たことない、笑顔)


「うぜぇ、うぜぇうぜぇ」




最悪な、目覚めだ








『シズちゃん』

そう言ってアイツは最高にムカつく顔をする

思い出しただけで苛々する

笑ってようが睨んでこようが同じだ

みるだけで苛つくようなうぜぇ顔しやがる

だが、あれは


少なくとも、俺は




(まじで幻覚だったんじゃねぇか)


一週間前、ノミ虫の気配を感じてぶっ飛ばそうと走った

黒い影を確認して目についた自販機に手をかける


ぶっ殺す



そう思って自販機を構えた


瞬間



奴が笑った

笑って俺に寄り添った


見たことない、

お前にそんな顔が出来たのか思うような優しい笑顔で俺の腕をとった


俺も笑って奴の頭を撫でた

愛しいものを慈しむような優しい手つきで




自販機が滑り落ちた

ガシャンと響いた音にハッとした次の瞬間には臨也も俺もいなかった





(疲れてたのか)

(気付いたら匂いも消えてたし)

(………うぜえ)


幻覚だったとしてもどうせアイツのせいに決まってる

違うかったとしてもアイツのせいだ

殺す、ぶっ殺す


頭ん中に出てきただけで苛つく、うぜぇうざい

いつもは顔を見たくねぇがここ一週間無意識にも意識的にもずっとアイツを探してた


あのムカつく幻覚のせいで毎晩毎晩毎晩人の頭んなかに出てきやがって胸くそ悪い

なんで俺に向けたこともないような顔で俺に笑ってんだよ



殴りたい殺したいぶっ飛ばしたい

あれはただの幻覚だったのか

確認、したい



アイツの隣に居たのは確かに俺だった

白地に藍の着物を着た俺は

なんだったんだ



もやもやする正体の掴めない苛々に腹がたつ



一ヶ月以上あってなかった

久し振りに見つけたと思ったら話しかけることのできない幻覚だった


苛々の原因は掴めない






(奴に、会って)

(確かめるしか)




「チッ」



携帯を手にとって、トムさんに今日の仕事終わりを確認する



(直接会ってぶっ殺してやる)



会いたい、と思っていたかどうかなんてどうでもよかった




end



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -