短編 | ナノ


「俺、子供ができたら『苺』って名前つけたいんだ」
「いきなりどうした」

部屋でホラーのDVDを見てるといきなり平助が訳のわからないことを言ってきた。

「苺美味いじゃん」
「そりゃ美味しいけど何で苺?」
「別に俺ぶどうも好きだからぶどうでもあり。漢字がいいかな」
「いや、普通に考えたら葡萄ちゃんって可哀相でしょ」
「じゃ葡萄くん」
「男だからいいってもんじゃないから」

テレビからは有り得ないほどの叫び声が聞こえてくる。別に怖くないんだけどね。むしろどっからあんな声だしてるのか不思議だね。

「あー…。そっか、葡萄はやっぱダメだよな」
「やっと気づいたんだ。僕、本気で平助のこと心配しちゃったよ」
「うん。葡萄なんて邪道だよな。実際そこまで葡萄に愛なんてないし」
「……は?」
「本当はパイナップルが1番好きなんだ。パイナップルのためなら何でも出来るぞ。死ぬこと以外。だって死んだらパイナップル食べれなくなるじゃないか」
「え、ちょっと待って。ちょっと待とうか」
「何だよー。まあ待ってるからな」

「…パイナップル。パイナップル……。それは男でしょうか。女でしょうか」
「女だったら苺にする予定だから男かなー。でもどっちでもいけるだろ?」
「うん。まあそうなんだけどさ。いや違うって。いや、あり…?」
「総司大丈夫か」
「うん。大丈夫。大丈夫だよ。大丈夫だから。
…よし。…ねぇ、平助?パイナップルはカタカナじゃん。ここは日本だよ。どうするの」

平助はどこからか紙とペンを出してきた。DVDはラストらしい。あ、コイツが元凶だったんだ。途中全然見てなかったからわかんないよ。

"杯納浮琉"

「これでどうだ」
「何それ」
「漢字バージョン」
「キモいよ。本当やめなよ。つけられた子供が可哀相。絶対僕なら嫌だ」
「そうかぁ?いい名前だと思ったのに」
「絶対絶対絶対絶対やめなよ」
「じゃあマンゴー」

「平助は絶対子供の名前付けない方がいいよ」