想い合い


部屋から出て暫く廊下を歩くと床に水滴が点々と続いている。
水滴を目で追って行くと誰かがこの道を通ったと一目瞭然だった。
自分の目的地に進むが、床の水滴も行き先が暫く一緒のようで次第に自分の用事よりもこの水滴の先が気になってしまい、そちらを優先する。
きっと待っている彼は、先約した私よりも優先があるとはな、などと剥れるのが目に浮かび、少し笑う。
そう思いながらも彼よりこの水滴の先に興味が沸いてしまった。
どんどん進んで行くと水滴捜査は漸く終わりを迎えたようで扉の前にたどり着く。
失礼します、と声をかけて扉を開ける。

「なんだ、早かったではないか」

部屋の主は分かっていたので驚くことはなかったが、奈々詩は部屋に入るとすぐに棚から拭く物を探した。
布を手に持つと長椅子に座っている声の主の髪に染み込んだ水を優しく拭き始める。

「仲達様、湯から上がったら髪はちゃんと拭き取ってくださいと言っているじゃないですか。
廊下に点々と水滴がこの部屋まで続いてましたよ」

「そのうち乾くからかまわん」

「駄目です!よろしいですか、濡れた髪を放置しますとそこから痛んでしまったり風邪をひかれますよ。
それにこんなに綺麗な髪をなさっているのですから…」

拭き終わると同時に司馬懿の首に腕を回して後ろからぎゅっと抱きつく。
いきなりのことで司馬懿の声が上擦った。
彼が自分の行動に意識してくれてると思うと愛おしくもなり、可愛いと思ってしまう。
言葉にしてしまうと彼は剥れてしまうので奈々詩は自分の胸にしまいこむ。
しかし今の彼にどうしても愛しい気持ちを伝えたくなり司馬懿の耳元に顔を近づける。

「私、仲達様の髪はとても好きです。艶やかでさらさらしていて…」

囁いてから奈々詩は司馬懿の腰まである長い髪に頬を摺り寄せて微笑む。
司馬懿も満更でもないようで奈々詩の行為を愛おしく思う。

「奈々詩、こちらに来い」

座っている長椅子の隣に座るように指示をする。
はい、と返事をして長椅子に座ろうとしたが司馬懿に正面から抱き締められる。
彼はあまり大胆な行動をしないのでいきなりのことで驚いて上を見ると嬉しそうで恥ずかしがっている司馬懿と目が合う。

「その薄着では寒いだろう。その…私は湯から上がったばかりだからこうすれば温かいと思ってだな」

抱きしめる理由を必死に探す彼から顔を背けて声を抑えてくすくすと体を震わせて笑うと、その震えが伝わり、やはり寒かったのかと思う司馬懿は抱きしめる腕に更に少し力を込めると奈々詩から声が漏れた。

「ふふふ…」

「なっ、笑っていたのか!」

「ごめんなさい。凄く嬉しいなと思いまして。暫くこうしていてもらってもいいですか?」

「お前がそう言うなら仕方がない」


有り難うございますと司馬懿に笑顔を向けると触れるだけの優しい口づけが降り、緩められた腕の力がまた込もった。



...終...


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