見つめる先


空は雲一つなく晴れ渡っている。
微風が頬を撫で、暑くもなく寒くもない気候の中、司馬昭は木漏れ日を浴びながら目を瞑って草原に寝転んでいる。
彼の父、司馬懿に学を学ぶように言われていたが昭は休憩と言いながら怠けていた。
漸く睡魔が来たと思った時に顔の辺りに何か気配を感じた。
ゆっくりとした動作で目を開けると、自分を覗き込む奈々詩の不機嫌そうな顔があった。

「また怠けましたね、昭殿」

「あー…休憩だって」

「またそんなこと言って!もう騙されません!」

そう言いながら奈々詩は昭の腕を掴んで、ぐいぐいと引っ張る。
可愛らしい少年のような面影を残しながら体だけは誰よりも大きい彼。
当然、力では叶うわけがないので奈々詩は昭の腕を離してその場に座り込む。
力で無理なら頭を使わなくては。

「長引かせてしまっては溜まる一方ですよ?」

何故、奈々詩がここまで昭を気にするのか。
それは彼のお目付役だからだが、それだけではない。

「実際は溜まってないだろ」

溜め息をつきながら再び夢の世界へと行こうとする昭にくすりと笑ってみせる。

「そうですね。夜にこそこそしないで午前中にやればいいのにって毎日思ってます」

「い″ぃ!?」

自分の腕枕から頭がズリ落ちる昭に奈々詩は微笑みを向けた。
やはり彼は努力している姿を誰にも見られたくなかったようだ。

「出された課題をしている姿をお父君に見せればいいではないですか。昭殿は損をしていますよ」

「俺が何しようが誰も見てないだろ。兄上が俺以上にやってるし」

昭は腕を組み直して頭を乗せ、奈々詩から顔を反らして目を瞑った。
これはもしかしたら拗ねているのかもしれない。
そう思った奈々詩は昭の頭を手で撫でた。
撫でられている昭は奈々詩の方を向き、きょとんとする。
次第に恥ずかしくなってきたのか手であしらう。
それでも奈々詩は、よしよしと撫で続けた。

「私は昭殿をずっと見ておりましたよ。…あんなに遅い時間までよく頑張りましたね」

「俺の所為で奈々詩に迷惑をかけるのは嫌だからな。だって…」

昭はニヤリと笑うと撫でていた奈々詩の手を取り、反対の肘で少し上半身を起こすと顔を近づけて触れるだけの口付けをした。
顔が離れると奈々詩は口を押さえて顔を真っ赤にしていた。

「好きだから」



...終...


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