祈りをこめて


先刻の戦で目を負傷し、手術をしたばかりだというのに司馬師はまた戦に出るらしい。
奈々詩は何度も何度も説得をしたが彼は聞いてはくれなかった。
本陣から出るつもりはない。と司馬師が言うので奈々詩は彼を信じることにした。

「私が戦えていたら、子元様のお役に立っていたかもしれないのに……」

戦場でも彼の傍にいれないことがとても悔しかった。
人には向き不向きがある。
奈々詩には武術が不向きだったので、彼をただ待つばかり。
そんな彼女に司馬師は嬉しく思い、床に臥せていた上半身を起こす。
奈々詩を手招くと彼女はその好意に従い傍に座る。

「お前はその点、本当に不器用だったな」

「刀があんなに重いだなんて思わなかったんです。
元姫様の武器なら大丈夫かと思ったのですが…的に当てるのが難しいですね……」

以前、司馬師にどうしても武器を扱えるようになりたいと頼んで稽古をつけてもらったことがあったが、その才能には恵まれていなかった。
隣にいる司馬師は奈々詩の髪を手で梳いながら稽古を思い出すと微笑し、思わず声を漏らす。そんな彼にムッとした。

「私は別の形で子元様を支えますもの」

「そうだな」

滑らかで艶やかな髪から手で梳くのをやめるとその髪に口を落とす。
するとその髪を靡かせ、奈々詩が振り向くと司馬師と向かい合わせになった。
何を思ったのか、奈々詩は立ち膝になると司馬師に顔を近づける。
左目がよく見えない司馬師は何をされたのか分からなかったが
額に温かいものが当たり、暫くして彼女が自分に何をしたのか理解した。

「必ず無事に戻ってきてくださいね。ここで待っていますから」

「あぁ」

そういうと司馬師は奈々詩の肩を掴み、体が傾くと彼女の頭を支えて一緒に床に伏せた。
いきなりのことで戸惑っている奈々詩に自分がされた位置と同じところに口を当てる。
奈々詩が驚いて顔をあげると愛しいものを見る優しい表情をしていた。
そんな彼に嬉しく思い、微笑むと顔が近づいてくる。
そっと目を閉じてその行為を待つ。

「奈々詩…お前が私の帰りを待っていてくれるから絶対に此処に帰りたいと思える」

重なり合う唇。
この幸せが永久に続きますように…。



...終...


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