呼んで


背高い彼を見つけて少し小走りで駆け寄る。
結った黒髪を靡かせる彼に後ろから声をかけてみた。
優しい彼は微笑み、名を呼んで振り返ってくれるに違いない。

「趙雲!」

「奈々詩、どうした?」

やはり微笑んで呼んでくれる趙雲に自然と笑みが漏れた。
話し方はそれこそ同期と思わせるが、奈々詩は少し身分の高い家の人間だった。
奈々詩が敬語を嫌う為、趙雲が我が儘に付き合ってくれている。
彼を大切に思っているが、共に過ごす月日が過ぎる度に違う感情が芽生え始めた。
きっとこの想いを告げたらこの関係は崩れるだろう。自分を大切にしてくれているのは趙雲より身分が高いから。

せめて彼を“趙雲”ではなく“子龍”と呼べたならといらぬ事を考えてしまう。

「姿が見えたから声をかけてみたの。迷惑だったかしら?」

「いや、そんなことはない。奈々詩、貴方の声を聞くと自然と元気が出る」

いつからか、無理して口調を大人っぽくしてみた。
だけれどやはり趙雲の方が大人だと知らされる。



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