ゼロセンチ


どたどたと女官達が廊下を慌ただしく走る音が響く。
今、休憩時間をもらっている奈々詩は首を傾げて自分の近くを通りすぎようとしている子に話しかけた。

「そんなに慌ててどうしたの?」

「それが聞いてよ。午前中はあんなにお天気が良かったのに雨が降りそうなのよ!
沢山洗い物干したから皆で急いで取り込んでるの。あ、奈々詩は休憩時間だから休んでて」

じゃぁね、と手を振り彼女は行ってしまった。
それから奈々詩は少し考え込む。

「そういえば、馬超様はお出かけしたんじゃなかったっけ?…大変!」

支度をして傘を持つと慌てて出ていった。
雨はぱらぱらと降り始めているので傘を差して急いで彼を探しに行く。

少し前。町の離れに小川が流れ、緑が生い茂っているあの場所で鍛練するのが気持ちが良いと連れていってもらったことがある。
もしかしたらそこにいるのかもしれない。

次第に空が唸り始め、黒雲が光る。
いよいよ本降りになりそうだ。
体力の無い自分を恨み、息を切らしながらも足を止めずに走り続けた。



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