約束


書簡と竹簡の整理に集中が切れた奈々詩は気分転換に部屋を出る。
特に行く宛もしたいこともなかったので、ただ廊下をぶらぶら歩いていた。
中庭に近づくと小鳥の鳴き声が聞こえたので、そちらに視線を向ける。

「あ、奈々詩殿も一緒にどう?」

軒下で手や肩、帽子等に小鳥を止まらせながら彼。
馬岱は柔らかい笑みを浮かべて奈々詩に向かって片手を挙げた。
もう反対の手には鳥の餌があるようで小鳥達はその手に群がり、餌をつついて食べていた。
奈々詩も笑みを浮かべて、少し駆け足で馬岱に近づく。
その時に馬岱の回りにいた鳥達は一斉に羽ばたいた。

「あ……」

馬岱の元に来た奈々詩は残念そうに声を漏らし、羽ばたいた鳥達の方を見ていた。

「少し驚いて飛んだだけだよ。ほらこれが餌」

奈々詩の手首を掴み、手を表に反すと布に入った餌を片手によそった。
すると暫くしない内に鳥達は奈々詩の手元に集まる。

「わぁ…!」

嬉しそうに微笑む奈々詩を見て馬岱も自然と顔が綻ぶ。

「実は執務に集中が切れてしまって…。
とても良い気分転換出来ました」

馬岱殿のお陰ですと、今度は馬岱に向けて微笑む。
彼はその笑みを見て自分の頬掻く仕草をする。

「いいっていいって!奈々詩殿さえ良ければまた一緒に餌やりしようよ!俺待ってるからさ」

「本当ですか!是非!約束ですよ?」

そう言って小指をつき出す奈々詩に馬岱もその小指に自分の小指を絡ませる。

「指切りげんまんー!ふふっ、子供の頃を思い出しますね」

「そうそう、子供の頃ってよくするよね! さ、奈々詩殿と約束したからには絶対に守るよー!」

ある晴れた日の一時の。
お互いにとても心地よい時間。



...終...


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