崩れ行く精神世界
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エスカレーターのようにじわじわと私に近づいてきた貴女は



エレベーターのような妙な浮遊感と共に私に接触してきた








風のような速さで私の隣を奪りに来た貴女は




光のような速さで私に懐いた









貴女は知らない

 私が貴女を不愉快に感じていたことを


貴女は知らない

 私が貴女を嫌悪していたことを


貴女は知らない

 私が貴女を汚く罵倒していたことを








私は貴女が苦手だった



関わることは極力避けて
 話す言葉は最小限に抑えて

偽りの笑顔を浮かべて
 偽りの言葉を並べ立てた

貴女との会話は必要以上に膨らませず
 貴女との移動は必要以上に口を開かず

周囲の声を聴いて
 貴女の声を聞き流した






でも その選択は間違っていた





最小限の会話をしても

偽りの言葉と笑顔で迎えても





貴女は私を見誤った




否、私が貴女を見誤った





私の行動は貴女を喜ばせた

私の偽りは貴女に誤認させた

私の努力は貴女が崩した

私の精神的抑圧感は貴女が増大させた




偽りの笑顔に騙されて

 偽りの言葉に騙されて



貴女は私に懐いた

私の罠に掛かった




でもそれが誤算だった





貴女は恐ろしく鈍かった

貴女は恐ろしく図太かった



貴女は 私を勘違いした






精神的抑圧


精神的緊張


精神的疲労


精神的激痛






精神に関するものが私に襲い来る中で


貴女は今日も私に笑いかけた








嗚呼、私はその笑顔が









   --何よりも嫌いだった--
















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