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「…げ、」
「あんた…、こんなとこで何してんの?」



▼飛鷹と期末考査▼



迫りくる期末考査に向けて、一週間前から始めた試験勉強。
期末2日前にして、あとは暗記教科を片付けるのみとなった。
この調子でいけば学年首位の座は守れるかもしれない。
しかし、油断は禁物である。
そう思いながらもちょっとした息抜きに、と近くのコンビニへと足を運んだ。

…そう、私は息抜きの為に行ったはずだ。
決して、決してこんな不良と偶然出会う為ではないはずだ。
引き返すか、しかしこんな不良の為だけに引き返してあげるのは気に食わない。
どうしようかと駐車場のど真ん中で立ち止まっていると、こちらの存在に気がついたそいつが「…げ、」と声を漏らした。

「あんた…、こんなとこで何してんの?」
「お前に関係ねえよ」

即座に返される言葉はあまりにも冷たかった。
いや、結構予想通りだったけど…!

「…期末の勉強、した?」
「するわけねえだろ」
「ですよね。すっごく予想通りで助かります」

ちょっとした仕返しにさらりと言ってのけた台詞に、飛鷹がジロリと私を見る。
別に怖いわけじゃないよ?怖くはないけどあれだよね、目力ハンパなくて冷や汗が噴き出る。
その視線から逃げるように踏み込んだコンビニの店内。
その瞬間にどっと流れ出る安心感。
飛鷹とはクラスが一緒。
もっと言えばクラス内での関係は成績トップと最下位。あいつがテスト受けても名前だけ書いて爆睡してるからなんだけど。
さらに詳しく言えば私は担任に押し付けられた飛鷹更生班長。
あいつはそのターゲット。
班の計画は順調に進み、学校に来ることさえ月1くらいだった彼を週3日程度学校に来させることに成功した今では
第2段階である「勉強の素晴らしさに気付かせよう!」(タイトルby担任)を実行中なのだが、これがまた上手くいかない。
私の個人的な考えとしては週3日学校に顔を出すようになったくらいでいきなり勉強させるのはどうかと思うが
まあ、そのあたりは担任に任せることにした。
…さて、ジュース。



「…あ、新作出てる」

お気に入りのジュースを確保し、レジへと向かう途中、たまたま目に入ったのはこれまたお気に入りのデザートの新作。しかも、期間限定品。もっと言うと、最後の一つ。
これは、今、買うべきだろうか。
自分へのご褒美として買うなら期末が終わった後の方がいいに決まっている。
だがしかし、ここで買って最高の休憩を手にすることも可能な今、私はどうするべきであろうか。

5分程悩みぬいた末、もう買ってしまおうと決心した瞬間だった。
私の右側から手が伸びてきて、新作であり、期間限定品であり、最後の一つであるそれが何者かの手の中に収まってしまったのは。

「…あ、えっ、はっ!?」
「悩みすぎだろ」
「ちょっと待っ、…何!?」

私のお目当ての品を取ったのは飛鷹だった。
呆れたような声とともに現れたそいつは、あろうことか、私が大事に抱えていたジュースまでも取り上げてすたすたと何事もなかったかのように歩き始めていた。



私が買うはずだったそれはまさかの飛鷹がお買い上げ。
静止の声も聞かずにさっさと外へ出ていく彼を追いかけると、無言で突き出されたのはジュースとデザートの
入ったビニール袋。

「いや、あの、意味分かんないんだけど」

どうやら飛鷹には私の言葉が分からないらしい。
突き出されたままだったビニール袋は半強制的に私が受け取る形となった。
開いた口が塞がらないような状況にある私を見て、飛鷹は櫛で髪を梳きつつ言葉を吐き捨てた。


「…うっせえな、勉強教えろ」




担任の考えに、間違いはなかったらしい。




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