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家に鳴り響くチャイムの音。
偶々一階に降りて来ていた俺は玄関に向かおうとする家政婦に俺が出る、と一言告げて玄関の扉を開けた。


「こんにちわー、隣に越して来た桜川で・・・す、」
「・・・は、?」


大きめの紙袋を持って訪ねて来たのは、確か同じクラスの桜川。
接点は無かったが以前一度だけ席が隣だった。・・・気がする。


「・・・え、えっ!?咲山くん、?」
「此処、俺の家だけど」


何で此処に、とでも言いたげな表情で俺を見つめる桜川にサラリと言ってのければ、
そっか、うんそうだよねと自分を納得させる様に頷く桜川。


「・・・隣、越して来たのか」
「えっ、あぁ、うん・・・えと、よろしくお願いします、」
「おぅ」


俯いたままの相手に話かければビクリと肩を震わせて頷き、頭を下げた。
・・・何つーか、完全に怯えてるな。


そのまま数秒間、気まずい沈黙が流れた。
これはどうするべきか、まずは相手を安心させるのが先なのか、と一人悶々と悩んでいると
「あ、あのっ・・・」と桜川が控えめに口を開いた。


「んぁ?」
「え、と・・・じゃぁ、私、失礼します。これ、つまらない物ですが、どうぞ・・・、」
「あ、あぁ・・・どうも」


完全に怯えているか細い声と共に僅かに震えている手で差し出された紙袋。
俺がその紙袋を受け取った瞬間、桜川は一礼して踵を返して歩き始めた。
・・・やべぇ、なんかすげぇ小動物みたい。
そんなことを思いつつ、俺は桜川の後ろ姿に声をかけた。
ビクリと肩を跳ねさせてゆっくりと振り返った桜川。


「・・・その、折角だし、・・・茶でも、飲んでいけよ」
「・・・え、いいんですか?」
「あぁ、」


慣れない台詞に目を泳がせる俺を大きく開かれた目で見つめる桜川。
・・・こんな台詞、源田ならいとも簡単に言ってしまうのだろう。
「折角だからお茶でも飲んでいかないか?」とか「最近新しく取り寄せた茶葉があるんだ」とか。・・・あー、絶対言うな、アイツ。
・・・知るかよ、台所の茶葉事情なんか。


「じゃぁ、お言葉に甘えて、」


ふわりと安心したような笑みを浮かべて玄関先まで戻って来た桜川。
・・・んだよ、笑えば普通に可愛いじゃねぇか。





もしも、
(隣に接点なんて全くなかった女が引っ越して来たら)
(相手の自分に対する恐怖心をどう消すか、すっげぇ悩む。)





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それは君だけだぜ、咲山くん。(




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