人間不信
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「俺は、人なんて信じられない」

暗い顔で彼は私にそう言った。

「うん、知ってる」

だから私は、わざと明るく返した。

「じゃぁ、何で俺に関わるんだよ」

俯いていた顔を少しだけ上げた彼は暗い色の瞳で私を見た。
何の光も灯していない彼の瞳がギロリと私を睨みつける。

「……中谷くんが、好きだからだよ」

「嘘だ」

私の言葉を即座に否定する中谷くん。
その声はとても小さかったが、私には叫んでいるように見えた。
そう錯覚してしまうほどに彼は動揺していた。

「…中谷くん、」

「そんなの嘘だろ、俺は信じないぜ」

私を見つめる彼の瞳の奥は微かに揺れていた。

「嘘じゃないよ」

「それも嘘だ!」

暗い瞳を揺らしながら中谷くんは私を見つめる。
自分の服の裾を握っている彼の手は、震えていた。

「…ほんとだよ、少しずつでいいから信じて…?」

私は震える中谷くんを抱き締めた。
中谷くんは驚いて私を見つめていたが
それ以上に自分自身が驚いていた。

「止めろ、俺は信じることが出来ないんだ…!」

「…出来るよ」

中谷くんの言葉を聞いて、私は彼を抱き締める腕に力を込めた。
私の腕の中に居る中谷くんは凄く小さく見えた。
サッカーをしているときの彼はあんなにも大きく見えていた筈なのに。

「中谷くんが信じようと思えば、信じられるよ」

私は微笑を浮かべつつ「だから、少しずつでいいから信じて?」と
先ほど言った言葉を繰り返した。
その時に見た彼の瞳の揺れは、既に治まっていた。







(俺が変わるキッカケは)

(間違いなく君の言葉だった)










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あれれ…人間不信ってこんな感じなんですかね?
なんかもう分かんないですね、はい。←
咲山さんの短編「Same Or Defferent」の中谷くんバージョン的な。

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