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「・・・・・・ない、」


私の目の前には見慣れたベッド。
そのベッドの上に散らばっているのは制服のポッケの中身やらバッグの中の教科書、日用品その他諸々。
かなりの時間、これらを凝視していたが、目当ての物がでてくる気配もない。
いつから無いのか、どこかで落としたのか。
何も分からないまま時間だけがすぎていた。


私の探し物。
部屋中探しても、家中探しても見つからなかった物。
それは、


「け、携帯電話が消えた・・・、」


・・・最悪、としか言えない状況。
きっと、数時間前に不良との鬼ゴッコの舞台となった見知らぬ町で落としたのだろう。
それより他に心当たりはなかった。


「はぁー・・・・・・最悪・・・」

深く溜息を吐いて制服や教科書、日用品その他諸々が無造作に放られているベッドに倒れて込む。
・・・今日は溜息が異常に多いというか、不幸が多いというか、ハプニングが多いというか。
こんなに色々と予想外の事態が続くと起き上がる気にもなれない。
・・・ていうか学校行きたくない。
まぁ・・・その、告っちゃった・・・わけだし、?
携帯は消えたわけだし、・・・色々と気まずいし。
あー、もう・・・・・・、咲山、まさか携帯に連絡とか、してないよね・・・?
・・・してたらどうしよ、いやでも咲山がメールしてくるのとか呼び出しばっかりだし・・・。
・・・・・・今日のことで呼び出しとかされないよね、?
あー・・・・・・ダメだ、分かんない。


そんなことを悶々と考え続けていると、益々クッションから顔を上げることが出来なくなった。
何故ならもう一つ、大変なことを思い出したからだ。


「・・・あ、あの携帯ロックしてない」


そう、言葉通り。
私は携帯にロックを掛けていなかったのだ。
・・・マズくない?だってデータフォルダに咲山の寝顔(隠し撮り(バレたけど))が保存されてるんだよ?
・・・・・・ヤバイよ!


「あー、もう・・・バッカじゃねぇの」


自虐の言葉を吐きつつ寝返りを打つ。
頭の中は咲山と消えた携帯のことでいっぱいだった。


「・・・しょうがない、明日探し行こ」


ポツリと呟いた言葉は誰に聞き取られることもなく空気に溶けた。




(・・・ほんとバカ)


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ダメだ、終わる気がしない。←



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