9.妹チャン復活大作戦-episode03-
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「・・・・・・そんっなに日本に帰りたかったのか、お前は」
「帰りたい訳ねぇだろ、結果的にお前らより先に着いてんだからいいじゃねぇか」
「・・・すっげぇギリギリだったけどな、源田と洞面が来る30秒前くらい」
「うるせぇぞ辺見、黙ってろ」
「いいなぁ、成神と藍莉!カタール以外の全エリア巡って来たなんて!」
「いやぁ、でも巡ったっていうか通った感じだったよね、健也」
「うん、街並みをちょっと見ただけみたいな・・・。時間的にはジャストだったけどね」


肝心なイナズマジャパンのメンバーが居ないジャパンエリアの宿舎。
飛行機の中と同様に騒がしい帝国サッカー部の面々。
今は咲山先輩・健也・あたしが辺見先輩に嘘を吐かせてまでカタール以外の各エリアを巡って来たことが源田先輩に知られ、
宿舎の一室を借りて正座させられ、説教をくらっている最中だった。
・・・説教と言っても、咲山先輩が喧嘩腰で話を進める為、源田先輩の矛先は咲山先輩に向いていた。
随分と前に宿舎に辿り着いていた辺見先輩は2人の話に偶に口を挟んでは咲山先輩に睨まれている。
その辺見先輩の話によると、辺見先輩をここまで連れて来てくれた土門先輩は既にアメリカエリアに帰ってしまったらしい。
・・・久しぶりにテレビじゃなくて生で顔を見れて腰を拝めると思ったのに。
その間、あたしと健也と秀一郎の1年生3人は宿舎の中を探索しながら健也とあたしの各エリア通過エピソードを語っていた。


・・・うん、アレは酷かった。鬼畜にも程がある。
あたしと健也が面白そうな建物やら何やらを見つけるも咲山先輩はチラリと視線を向けるだけで次に進んでしまう。
確かに、各エリアの街並みや雰囲気を感じる事は十分に出来た。
だがしかし、余韻というものが全く持って無かった。余韻どころか建物の中に入ることさえ出来なかった。
そりゃあ、咲山先輩は興味ないかも知れませんよ?でも、でもさ・・・
立ち止まって視線を向けて一言の感想くらいくれても良くないですかね!?
・・・本人に直接抗議したところ、「通れるだけでもありがたいと思え」との言葉を頂きましたが。



一通り探索を終えて1階の説教部屋(仮)に戻ってきた時、秀一郎がその場にあったテレビのリモコンでテレビをつけた。
丁度いいところに、今現在のFFI・・・イナズマジャパンvsオルフェウスの試合が映しだされている。
しかし、それも既に終わりが近くなっていた。


「あ、もう終わっちゃうッスね」
「え、ホントだ・・・あーぁ、」
「真っ直ぐここに来ていれば前半から見れた筈だがな」
「まぁまぁ源田先輩、根に持ちすぎですよ」
「・・・おい、アレか?鬼道が言ってたミスターK・・・影山は、」
「・・・・・・あぁ、アレだろうな」


辺見先輩が一番にオルフェウスのベンチに座っている人、影山総帥を見つけたらしくテレビ画面を指差した。
その言葉に咲山先輩も暫く間を開けて同意する。
少しの間続いた沈黙は、いとも簡単に破られた。


「・・・何があってあんな金髪になったんスかね」
「ふはっ、ちょ・・・健也!あたし言いたいの我慢してたのに!」
「そうだよ成神!僕も言わない方がいいのかな、って思って言わなかったのに!」
「・・・普通は言わないよな、あの空気で」
「言わねぇっつーか、言えねぇと思うけどな」
「・・・さっきの沈黙は何だったんだ」
「だって思ったことがいつの間にか口に出てたんスもん!」


その場にいた健也以外の全員がこれでもかと言うほど健也を見つめる。
当の健也はケラリといつも通りの悪戯な笑みを浮かべていた。


「・・・あ、試合終わっちゃった」
「お、勝ってんじゃねぇか、やるなアイツ等」
「鬼道さんも佐久間先輩も居るッスからねー、いいなぁ俺もFFI行きたかったッス!」
「今回は鬼道と佐久間に俺等の全部預けてんだ。
・・・今は強くなって帰ってくるアイツ等と対等で居られる様にボール蹴ってりゃいいんだよ」
「さ、咲山先輩大人なこと言いますね!見直しました!」
「咲山先輩かっこいッス!」
「・・・逆にそこまで冷静だと本当に咲山かどうかも疑わしくなるぜ」
「黙れ、ぶっ殺すぞ辺見」
「・・・咲山の言う通りだ。俺達はあの2人が戻ってきた時にまた一緒に戦える様にしておかなければな」
「そうッスね、俺達だって負ける訳にはいかないッスからね!」
「あぁ、次は絶対俺等も世界行こうぜ」
「そうと決まれば練習あるのみですね!」
「イナズマジャパンの練習に交ぜて貰えばいいんじゃねぇの?俺等もアイツ等も強くなれるし一石二鳥だろ」
「あぁ、監督に頼んでみる価値はあるだろう。・・・咲山、今日異常に冴えてるな」


既に選手達は退場した、寂しいフィールドが映されるテレビ画面。
そのテレビの前で決意を新たに笑いあうみんな。
・・・何か凄い、漫画みたい。ていうか、咲山先輩ってあんなことも言えるんだね。


そのみんなの姿に少しだけ、自分の居場所を間違えた様な気がした。
何か、自分の入りこめないところに直面したような不思議な感覚。
青春ってこんな感じなのかな、と思いながら暫くは会話に交ざらず、少し距離を置いてその様子を眺めていると
ねー、藍莉!と健也があたしを会話に巻き込んだ(正確には腕を掴んで引き寄せられ強制的に開けていた距離を縮められた)。
その後今更ちょっと遠慮すんなよ、と苦笑気味に耳打ちされた。



・・・どうやら、健也には敵わないらしい。



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・・・あれ、あれれれれれぇ?????
あれれ、可笑しいな飛鷹さんが出ないぞ。
咲山さんにかっこいい事言わせたい年頃なんですごめんなさい((
洞面君が空気orz
飛鷹さん、次こそは・・・!!



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