7.妹チャン復活大作戦-episode01-
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「うわっ、飛行機とか初めて!テンション上がるーっ!!」

「テンション上がるのはいいんだけど最初のうわって何」

「いやぁ、テンション上がっちゃって」

「俺、藍莉のそういうとこは理解できないんだけど」


健也の家の自家用ジェットの中、あたしは初めて乗る飛行機にはしゃぎまくっていた。
やっばいどうしよう、テンションが…!!!!!

しばらくの間、健也の注意もシカトして飛行機の中を走り回っていたが
格闘の末、健也に窓際のシートに縛り付けられてしまった。
子供のように頬を膨らましつつ雲の上を飛ぶ飛行機の中から外を眺めていると
後ろのシートから聞き覚えのある声が複数聞こえてきた。

「まさか俺達まで乗せてもらえるとはな」
「まぁ、俺だけ佐久間先輩と鬼道さんに会ってくるのも気が引けるッスからね」
「すまないな」
「いいんスよー」
「ねぇ、成神!飲み物もらえたりする?」
「あ、あるよ。ジュース?お茶?」
「酒」
「こら、咲山」
「さ、咲山先輩…」
「だめッスよ!あるけど出しません!」
「…あるんだな?」
「えぇ、まぁ……父さんが移動中に飲んだりするんで」
「何、日本酒?ワイン?」
「割と何でも揃ってるッスよ」
「成神!それ以上咲山に教えるな!」
「盗ってくる」
「だめだ咲山!まだ未成年だろう!」
「咲山先輩!!落ち着いてください!はい、深呼吸!!」
「洞面それ多分意味無いから!ちょ、先輩!勝手に機内物色しないでください!!」
「心配すんな、ちと味見するだけだ」
「お前の味見はビール瓶2本だろう!?」
「……源田、何で知ってんだよ」
「お前が鬼道家のパーティで味見とか言ってビール瓶2本開けたんじゃないか、それも一人で」



……あれ、乗り込む時こんなに人数いたかな。
ていうか…あたし一人で窓の外眺めるとか寂しいよ!!

「ちょっと健也!あたしも混ぜて!寂しい!」
「藍莉が走り回らないならね」
「じ、自信も保証もないけどなるべく抑える!」
「それ縄解いちゃいけない気がするんだけど」
「大丈夫!頑張るから!」

健也を無理矢理納得させてなんとか縄を解いてもらった。
そしてシートに膝立ちしている状態で後ろを覗けば
そこには飛行機の中とは思えないような光景が広がっていた。

酒を盗りに行こうとする咲山先輩を源田先輩と健也が必死に押さえつけている。
その隣では秀一郎が咲山先輩、深呼吸しましょう!とこれまた必死に訴えかけている。
そのまた隣では辺見先輩がぐったりとした様子で壁に凭れかかっていた。

……これは、あたしが走り回るより酷い状態なんじゃ…。

「…おい、お前ら騒ぐな…………っ吐く、」
「ちょっ、辺見先輩吐くなら外で!」
「…お前それ、俺に飛行機の外に出て…風に飛ばされろって、言ってんのか…」
「え、あ、…バレました?」
「おま…っ殺すぞ……!」
「あ!じゃぁ辺見先輩が深呼吸しましょう!」
「洞面お前どこまで深呼吸にこだわるんだよ!
…って何で俺がツッコんでるんスか!ツッコミは辺見先輩の役割ッスよ!?」
「離せよ源田、味見程度じゃ潰れねぇって」
「そういう心配をしてるんじゃない!」



…何て言うか、咲山先輩が暴走してる。



うわぁ、こんな咲山先輩初めて見た。
サッカーしてる時と屋上でサボってる時しか見たことなかったけど。

「…咲山先輩、お酒飲むんですね」
「あぁ、別に意外じゃねぇだろ?」
「うん、全然。ていうか違和感ないです」
「お前思ったよりハッキリ言うんだな」

マスクであまり表情は見えないが咲山先輩は笑っているように見えた。
今更だが咲山先輩は「未成年は酒を飲むな!」
と説教している源田先輩を完全にスルーしている。

「ていうか…、辺見先輩ー?無事ですか?」

壁に凭れかかって今にも死にそうな感じの辺見先輩に声をかけると
「………おぉ、」と短く返事が聞こえた。
…無事には見えないけど。
「辺見先輩ー?深呼吸してますかー?」
と問いかける秀一郎は辺見先輩の足元でしゃがみこんでいた。

その様子を眺めていると健也の叫びにも近い声が聞こえてきた。

「だから!機内を勝手に物色しないでくださいってば!!」
「酒盗ったら大人しく座ってるっつの」
「まず酒を盗るってところからダメなんスよ!!」
「何度も言ってるだろう!未成年の飲酒は身体の成長を妨げr…こら咲山!ちゃんと聞いてるのか!」
「…うるせぇな」
「うるさいとは何だ、俺はお前を心配して言ってるんだぞ」
「ちょ、咲山先輩!機内で釘バット振り回したりしないでくださいよ!?
源田先輩も咲山先輩につられて戦闘態勢に入らないでください!!」






…飛行機での移動中ってこんなに騒がしいんですか?







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