6.妹チャン復活大作戦-episode00-
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「絶対、ヘッドフォンよりイヤホンが良いと思うけどなぁ」

「何言ってんの、ヘッドフォンが一番だろ」


暇すぎる放課後。
今までお世話になっていた(暇を潰していた)サッカー部が
休みだというので健也に遊んでもらうことにした。
そして今は学校からそう遠くはない喫茶店で遊んでもらっている真っ最中。
…と言っても、普通に話しているだけだが。

「……藍莉さ、兄ちゃん居なくて寂しくない?」

急に話を変えられ、一瞬思考が止まった。

「え、ぁー…わりと大丈夫?かな?健也達居るし?鈴目ちゃん達も居るし??」

「語尾疑問形じゃん」

「う、…だって大丈夫な気もするし、大丈夫じゃない気もするし…」

「何ソレ、曖昧だね」

あたしの返答に苦笑を浮かべる健也。
うん、苦笑しちゃうのはすっごい分かる。

「…会いに行ってみる?」

「…は?」

健也が二ィ、と口角を上げてあたしを見る。
あたしは訳が分からなくて首を傾げていた。

「だから、兄ちゃんに会いに行こっか、って言ったの!」

健也の提案にあたしが頷くのはおよそ2秒後だろう。










―刀\刀\刀\刀\刀\刀\



「飛鷹!」

「…佐久間、何か用か?」

練習が終わり、晩飯も食べ終えて自室へ戻ろうとした時
不意に佐久間に声をかけられた。
その佐久間の表情は気のせいか異常な程に笑顔だった。

「お前、妹居たよな?」

「あぁ、居るが…」

「会いたくねぇ?」

「…は?」

突然の佐久間の問いに頭がついていかない。
練習もあるのにどうやって会うというのか。
それに藍莉が居る日本と俺が居るライオコット島は簡単に会えるような距離ではない。

「な、会いたくねぇ?」

「別に…会いたくないわけではないが……」

「よっしゃ!じゃぁ、決まりな!」

俺の返事を聞くなり携帯電話を取り出して
おそらくだがメールをし始める佐久間。
全く話が掴めない。

「ちょっ、ちょっと待て、どういう…?」

「?あぁ、俺の後輩に成神って奴が居てさ。あ、ネオジャパンに居た紫の髪でヘッドフォンの奴な。
あいつがお前の妹と仲良いらしくて、んで、アイツの話によると
お前の妹ちゃんが最近はいつもより静かだから
兄ちゃんに会わせてやれば元気になるんじゃねぇかなー、
って思ったらしいんだよ。
つまり、妹ちゃん復活大作戦だな」

佐久間の話を聞いて、今まで何も理解できていなかった俺の頭が事を急速に理解しはじめた。
そして、曖昧だった俺の意思がはっきりし始める。
佐久間の提案に俺が頷くのはおよそ2秒後のことだろう。




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