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病院並みに真っ白なベッドに部屋に天井。
流石は帝国学園だと思わず呟いてしまうような保健室。
目の前のベッドに横たわる幼馴染みは未だに目を覚まさない。


「先生!二人とも捕獲はしましたが幼馴染みの方が何故かしら倒れたので保健室に行ってきます!幼馴染みの運搬にサボリ魔の方お借りしますね!」
そう教室の入口でまくしたてたのはおよそ15分ほど前のこと。
ぽかん、と口を開ける数学の教師にそれでは!とふざけたように敬礼をして阿保か、と咲山に頭を小突かれたのは14分前。
3階の教室から1階の保健室まで渡を運んでベッドに寝かせたのは10分前。
保健室の先生は居ない。
出張があるらしくあたしと咲山に保健室を預けて出ていってしまった。
渡が目を覚ます気配はない。
保健室の壁に寄り掛かる咲山が静かに口を開いた。


「お前、聞えたか?」
「ん、何が?」
「お前が屋上に入って来る前、俺達が何を話してたか」


心臓が跳ねた。
咲山を見ると至って真剣な表情をしている。


「何も聞こえなかったよ?何の話してたの?」
「…そうか。別に、お前が気にすることじゃねぇよ」

呟く様に答えると、咲山はあたしから目を逸らした。
...一体何なんだこの状況は。すっごい動きづらい。


「...ちっ」
「咲山?」


暫くの沈黙を破ったのは咲山の舌打ち。
マスク越しでもよく響く舌打ちは咲山が無性にイラついていることを示していた。


「教室、戻っててもいいよ?」
「あ?...いや、残る」


ピリピリしたオーラを発し始めた咲山に声を掛けた。
学校一のサボリ魔がわざわざ自分から授業を受けに行くことはないんだろうな、と思っていると
案の定、否定の言葉が帰ってきた。
そして咲山は今まで凭れ掛かっていた壁から背を離し、渡が寝ているベッドの端に腰かけて
ベッドの隣にパイプ椅子を持ってきて座っているあたしの髪をくしゃりと撫でた。
何かあった時、お前一人じゃ大変だろ。という台詞つきで。


「...ありがと」


時 々 見 え る 優 し さ
(心臓、大丈夫かな。)

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