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「もうー……、二人とも何処いっちゃったの…」
人気のない静かな廊下。 それもそのはず。何故なら今はどの学年、どのクラスも授業の真っ最中だからだ。 そんな中あたしは、サボリ魔で有名な咲山と幼馴染である渡を探してこの広い帝国学園を彷徨っていた。 何であたしがこんな学級委員みたいなこと…。 いや、咲山と話せるのは嬉しいけどさ。 ……あの人、甘いもの苦手だったのか。 じゃあだめじゃん、レモンの砂糖漬けは止めて他の差し入れにしよっかな。 あ、でも咲山だけ別の差し入れに・・・、却下。あたしそんな器用なことできないもん。 廊下を歩き回りつつ様々な考えを張り巡らせている最中、あたしはあることを思い出した。
「・・・咲山、屋上好きじゃん!」
何故もっと早くに気付かなかったのだろうか、あの人のサボリ場といえば屋上だったのに。 「渡も一緒に居る気がするなぁ。・・・よーし、2人まとめて捕獲してやる!」 一人愉快そうな笑みを貼りつけ、屋上に続く階段の方へと全力疾走した。
背後から不意を突いて捕獲してやろうと忍び足で階段を登る。 女の勘。そして幼馴染の勘とはよく当たるもので。 僅かに開いている扉から中を覗けば、そこには予想通り2つの影があった。
「・・・あたし凄い、当たっちゃった」 自画自賛しつつ様子を窺っていたが、どこか渡の様子がおかしい。 なんというか・・・若干肌が青白い。血の気がない、というのだろうか。 ・・・貧血?まさか。
「・・・麗亜のこと、どう思う」
いつもより僅かに低い渡の声が風に乗って聞こえてくる。 あたし?っていうか渡、咲山になんてこと訊いてんの!? ・・・で、でも気になるのが人の性だよね。うん。 ていうか普通に盗み聞き・・・・・・、ごめん、2人とも!心の中で謝るからそれで許して! こちらには気付いていない2人にこっそりと手を合わせ、耳を澄ました。
「ハッ、どうだろうな」 「誤魔化すなよ・・・!」
・・・なんと咲山らしい言葉。 いや、別に期待してたわけじゃないけど、! それにしても、渡の様子がおかしい。具合でも悪いのだろうか。 次の瞬間、
「んだよ、お前・・・麗亜に惚れてんのかァ?」
微かに聞こえてきた咲山の問いに、あたしの思考回路はフリーズした。 そんなはずはない、渡があたしに対してそんな感情を持ち合わせているはずがない。 頭の中で否定した。 しかしあたしの考えとは裏腹に目に映ったのは、びくりと跳ねる渡の肩。
その後は強い風が吹いて僅かな扉の隙間を閉じてしまった為、渡が何か答えたのかは分からない。 扉が完全に閉じて辺りが薄暗くなっても、あたしはそこから動くことが出来なかった。
あたしにとって渡は幼馴染で、理解者で、家族のようなもの。 でも、
渡にとってのあたしは、そんな存在ではなかったのかも知れないと そう思い始めた今ではもう
全てが手遅れだった。
探 し 人 (ねぇ、渡。嘘だって言ってよ) ---------
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