こころは、見えないものですよ。
そう言ったボクの顔を難しそうな顔で見る火神君を見上げる。


「いや、そりゃそうなんだけどさ」

「それ以外に何があると…?」

「完璧になんかわかるわけないし、でも、わかりたいわけ。だからこいつ今何考えてんのかなーとか必死に考えるんだよこっちは」

「はぁ」

「はぁ、じゃねーよまったく」


少し前を歩く火神君はボクの反応に不満なのか、ブツブツと何か言っている。
夕刻、いつもより少し早い部活帰りの道に長く伸びた影が二つ。
火神君はボクの考えていることがわからない、と言う。それは当たり前だろう、その気持ちは個人のものなのだから。そう思って言ったのだ。こころは、見えないものだと。


「でもお前はオレの考えてることわかってるじゃねーか」

「だって火神君は顔に書いてありますもん。今も思い切り腹減ったって書いてありますもん」

「……」

「火神君は普通より群を抜いてわかりやすいですよ。マジバ行くんでしょう?」

「…納得いかねー!いつか絶対オレもお前が考えてること言い当ててやるからな!」

「頑張ってくださいね」


こころは、見えないものだと。
でも考えることはできるのだと。
少しでも、ボクをわかってくれようとしているのだと。
火神君はそこまで考えていないかもしれないけれど、そう思うと自然に口元が緩んだ。


「何笑ってんだよ」

「いえ、何も」

「なんだよもう」


普通の人じゃ気付かないような仕草も、少しずつ気付いてくれるようになってきていることが嬉しくて。
こんなことを考えているなんて、君は思いもしないだろう。
でも、いつか辿りついてほしい自分もいて。


「……待ってますよ」


そう、大きな背中に小さく呟いた。




END



******



付き合いたて、ほのぼの目指してみました。
火黒大好きです。これからもずっと。


111011 風華香夜



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -