《五万打記念リクエスト@》 ※続きです ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「あー、白石それとって」 「これか?」 「ん。……おおきに」 白石との共同生活を始めてから早1ヶ月。慣れというのは恐ろしいもので、白石との日々は私にとっての日常と化していた。 それは彼も同様らしく、今も慣れた手つきで私の欲しいもの(耳掻き)をとってくれた。 一応(?)同一人物であるためか、趣味も思考も似通ってる(私は若干似せた節があるものの)ために、彼には皆まで言わずとも全てが伝わるのが心地良い。 ちなみに学校へは交代で通っていたりする。流石に勉強が遅れてしまったら彼も困ってしまうだろうし、私の場合既に一度中学を卒業した身であるから多少授業が進んだからと行って大した問題もない。ぶっちゃけ、学校行かなくても高校に受かるくらいの自信はある。 まぁ逆に成人してるのにも関わらず、高校にも受からない程度の学力しかない方がいささか問題だろう。 「あー、気持ちえー」 「自分、ほんまジジ臭いなぁ。同じ中学生には思えへんわ」 「……人が気にしとることをさらりと言わんでくれへん?」 「一応、自覚はあったんやな」 「……」 うう、ここは我慢だ我慢。相手は中学生なんだし、ここで挑発に乗るなんてまさに相手の思う壺に――。 「……なぁ、」 「――う、うぉぁっ!!い、いきなりなんやねん!びっくりさせんなやっ!」 いきなり下から覗きこむなんて卑怯だろーがっ!心臓が飛び出すかと思ったじゃないか! 「自分が勝手にびっくりしたんやろ……。で、本題なんやけど」 「なん?」 「だいぶこっちの生活に慣れて落ち着いてきたころやし、 ――そろそろ本格的に“向こう”へ帰る手段を探したがええかなと思うて」 「……あぁ」 ……そりゃ、そうか。こっちは勝手に新しい兄弟が出来たくらいのノリでいたのだけれど、彼は元々この世界の住人じゃないんだ。 彼には帰るべき場所がある。だったら、私もちゃんと彼を送り届けてあげなくちゃいけない。 「せやな。そろそろちゃんと探さなあかん頃合いやと思う」 「昼間は学校があって二人とも下手には動けん。となると」 「……夜、か」 「それしかないやろな。かと言うて、夜は夜で警察とか不審者とかで色々怖いんやけどな」 「せやったら、いっそのこと探索は昼でもええんちゃう?大学生を装えばそないに不自然でもないやろ」 「確かになぁ。片方が学校に行っとけばとりあえず問題ないやろうし」 「そうと決まったら早速明日から探索開始やな!」 「おん!」 ――――――――― ――side白石 「白石?どないしたんぼーっとして」 「――へっ?そ、そないなことあらへんけど?」 「嘘や、目が泳いどる」 う……。なんやこっちの謙也は“あっちの謙也”と違うて鋭い気がするなぁ。まぁ、俺が変にそわそわしとったんが悪いんやろうけど。 せやけど、あちらへ帰る方法の探索を始めて今日で一週間。そろそろ何かしらの手がかりでも見つかるんやないか思うて落ち着けないのはしゃーないやろ。 「それにしても、最近の白石はなんか変や」 「へ、変?どこがや?」 「んー、これって断言出来る訳やあらへんけどな。なんか、……雰囲気が幼い気がする」 ギクッ。 そ、そらこっちの俺がジジ臭すぎなだけで俺の方は至って普通な男子中学生やっちゅーねん!そのせいもあってか結局探索は全部こっちの俺がしてくれとるし、まぁそこは感謝してんねんけど。俺がこうして毎日学校行けるのも、あいつのおかげやしなぁ。 ……それよりも。 「謙也に“だけ”は言われとうないな」 「ちょっ!お前それどういう意味やねん!」 「さぁ?ま、ちょっと頭捻れば答えは出るんとちゃう?」 「ぐぁーっ!めっちゃ腹立つ!」 流石謙也。こういうとこはどっちも変わらへんのやな。ホンマからかいがいのあるやっちゃで。 そういえばもう一週間なんやから、そろそろあいつから連絡あってもええ頃やと思うんやけどな。ホンマ一人で探させて大丈夫なんやろか……? ―――――――― 「……これって」 眼前の“それ”は、揺らめきながらもしっかりと自身の役割を固持するかのようにして、そこに存在した。 形は定かではないのだけど確かにそこにあることを感じる“それ”は、中心に吸いこまれるように生じる僅かな空間の歪みを頼りに、視覚化されているようでもあった。 私の考えが正しければ、“それ”は。 「……白石が帰る、手段」 (希望の光?) |