――side 謙也




……正直、なんで俺がって思うた。


この全国大会が始まってからと言うもの、俺はずっとシングルスを任されて来とる。多分、俺のテニススタイルであるスピードテニスが、シングルス向きやって言うのが理由としては大きいんやろうな。

せやけど、かと言うて俺は全くダブルスが出来へん訳やない。むしろ、協調性に欠けるメンバーの揃ったウチのチームの中じゃダブルスを組めるやつなんて限られとるし、その中でも俺は相手に合わせることが出来る貴重な人材やっちゅー自負がある。
現に、ウチのチームでまともにダブルスが成り立っとるのは小春とユウジのペアくらいなもんやろう。


それなのに、俺は毎度毎度シングルス。俺以外にもシングルス向きの選手はいくらでもおるはずなのに。何故か、白石は俺をシングルスで使う。


俺には、白石が考えてることが分からへん。俺と白石は付き合いが長い方とは言っても、その期間はせいぜい一年程度。いや、例えその期間がもう一年延びようとも、頭が良い白石の考えは俺の考えつかんところまでいっとるんやろうなって思う。



(……それにしても)



俺は既にネット際へと立ち、飄々と俺を待っている眼前の敵を見据えた。
相手は王者立海大付属中で、しかも三年生。ビビってないと言えば、当然嘘になってまう。それに、その風格はまさしく王者に相応しいものやったから、俺が更にビビってまうのもしゃーない話やで。


名前は先ほど対戦表で目を通しとる。確か、名前は。



(――毛利寿三郎)



一目見て感じたのは、王者としての溢れんばかりの気迫と風格。



そして。




「ザ・ベストオブワンセットマッチ、立海サービスプレイ!」


「――君、確か二年生やったっけ。楽しい試合にしようなっ」



負けるはずがないのだという、圧倒的な自信。








――せやけど。




「……任されたからには、全力でぶつかって戦う。それだけや」




俺は、チームの命運を託されとるんやから。絶対に、負ける訳にはいかんのや。
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