7月もそろそろ終わりを迎え、本格的な夏の訪れを容赦ない太陽の日照りが知らせている、そんなある日のこと。





「みんな!明日から合宿するで!」



私は部活の後に急きょレギュラーの皆を集めて、声高々にそう宣言した。ちなみに皆の手元には配布資料として合宿のしおりが置かれているが、これは私が夜な夜なパソコンとにらめっこして作った、昨晩出来たてほやほやの力作である。



「あら、えらいまた急な話やねぇ」


他の皆が急過ぎて完全にフリーズしている中、小春ちゃんだけはいつもの調子でニコニコしながらこっちをみてる。
多分今回のことは予想出来てたんだろうな。恐るべしIQ200。



「い、いくらなんでも急すぎるっちゅー話や!」


そんなこんなしていると、いつの間にか謙也が復活。流石付き合いが長いだけあって、彼の順応性は高いよね。うん。



「大丈夫やで!ちゃんとオサムちゃんからの許可はとっとるし!」

「白石はん、多分皆が心配しとるんはそことちゃう」


あ、師範。貴重過ぎるツッコミわざわざご苦労様です。



「――そ、そや!準備!準備が全然出来てへんやん!」

「テニスなんてラケットとボールさえあれば他にいるもんないやろ?」


笑顔でそう答えてやれば、謙也は言葉を詰まらせた。


「うぐっ……。
――移動手段は!?移動手段が確保出来てへんで!」

「移動は必要ないで、ここでやるから」

「えっ」



……さてさて、謙也が再びフリーズしたとこで、さっそく本題に入りましょうかね。





「……みんなも分かってるとは思うけど、次始まるのは全国大会。きっと今までのように一筋縄ではいかへん。そこに集まる選手は、皆厳しい地方大会を勝ち抜いて来た強者ばかりや」


せやから、と。一旦呼吸を整えてから、私は言葉を続けた。



「――勝つためにやれることはやっておきたい。せやから今回の合宿を企画したんや」


私の静かな物言いに、場がしんと静まり返る。どうやらみんな合宿の開催に納得してくれたようだ。


そんな中、いつの間にか復活していた謙也だけがおずおずと手を上げ、一言。


「……急に発表したのは?」

「ん?いや、その方がみんな驚くかな思うて」


にこやかにそう返せば。





「そんだけの理由でギリギリに報告すんなやぁぁっ!!」



と、今日一番の鋭いツッコミを頂いた。

……だって、いつもみんなが笑わかしたもん勝ちとかいうじゃないか。私もただそれに則って実践しただけなのに。



なんだか解せない、と思いつつ私は合宿の詳細を簡潔にみんなに伝える。その後、これ以上長話をしても帰りが遅くなるということで、そのまま解散となった。
まぁあんなこと言ったけど、最低限の準備は必要だろうからね。





さて、いよいよ明日から待ちに待った合宿だ。
精一杯頑張ろうっと!


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