最遊記 | ナノ


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「こんにちは、紅月」

「よっ、邪魔するぜ?」

「あら、いらっしゃいませ。八戒、悟浄。」






秋も後半に入り肌寒くなってきたある日、紅月は執務室の前の庭を掃き掃除していた。


猪悟能の一件以来、高頻度で遊びに来る為仲良くなった八戒と悟浄をにこやかに出迎えて締め切っている執務室に振り返る。






「玄奘様、悟浄と八戒が来て下さいましたよ。」

「帰れ。」

「てめ…」

「玄奘様!」

「もはや恒例ですねぇ」






障子が開く事もなく返ってきた返答に八戒が苦笑いし紅月が諌めるように言った。






「お客様にそれはいけませんよ!」

「うるせぇ、毎日のように来て猿と騒いで邪魔だけして帰るのはもう客じゃねぇ。」

「あ、それは僕じゃありませんね」

「俺かよ!!」

「その頭で理解出来て何よりだ」

「玄奘様!」






すっと障子を少し開ければ眉間に皺を寄せていた三蔵が更に皺を深くして三人を睨みつけた。






「寒ぃだろうが、閉めろ。」

「ダメです!締め切ったお部屋でお煙草を吸われたら私のタイミングで換気させて下さいとお約束して下さったではありませんか!」

「チッ…」






約束したのは事実だったのか、口を閉ざした三蔵は煙草に着火して止まっていた筆を動かし始めた。
紅月が知る由もないが、女性という存在に訳ありの八戒と悟浄は三蔵が紅月の言う事だけ聞いている事に気付いている。






「相変わらず…(彼女には弱いですねぇ)」

「そいや噂の猿はどうしたんだ?」

「悟空なら…」






あそこに、と指を差した方角に視線を走らせると少し離れた場所の小さな畑でせっせと作業をしている土だらけの悟空がいた。
楽しそうに土を掘り起こしており、悟浄や八戒には気づいていない。






「……何やってんだあいつ?」

「玄奘様から以前、あの場所なら好きに使用してもいい、と許可を頂いたんです。
悟空もよく食べるので何か育てようかと思ったんですが悟空が食べてみたいと言い出した事と沢山作れるという事でお芋植えたんですよ。」

「あーそれで紅月は今日掃き掃除しているんですね。」

「えぇ。」

「……どーゆー意味?」






納得した表情の八戒に紅月が頷くと、まだその意味が分かっていない悟浄が首を傾げた。






「紅月は綺麗好きですからね、いつもならこんなに落ち葉を放っておく事はしないでしょう。
落ち葉溜まってるのに気付いている筈なのになーとこの間から気になってたんですよ。」

「みっともないお庭を晒してしまってすみません。
あまり溜めないように程々に掃除してたんですが…ここ木々が多いので一度に落ちる量が多いんです。」

「全然気付かなかったわ。なるほどねー」

「貴方は家の片付けができませんからねぇ…」

「片付けくらい出来るっつーの。」

「では片付けしたゴミはいつが捨てる日ですか?」

「……………」

「まずゴミ捨ての日を覚えて下さい」






にこにこしながらと八戒に一蹴され口を閉ざした悟浄に紅月は苦笑して、お茶の用意をしにその場を後にした。










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