進撃の巨人 | ナノ


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※あてんしょん※
今回ちょっと胸糞な内容が含まれてます。
やべぇと思ったらUターンして下さい。必ず自衛して下さい。

Ok??







エルルカが王都に行った日から半月が経った。
あの日以来、エルルカは何事も無かったように訓練に参加しリヴァイに与えられた雑務も文句1つ言わずいつものようにこなしていた。


何事も無かったように。


いつもなら口数が少ない中でも本気ではない小言や文句が1つや2つ、リヴァイに限らず書類不備が多い時にぽつぽつと零していたがそれすらめっきり無くなった。



それと変化がもう1つ。





「……じゃ、あたし上がるから」

「……あぁ」






トントン、と終わった書類を整えてリヴァイに一言告げて部屋を後にしたエルルカは真っ直ぐ部屋に帰らず人気のない裏口で念を発動させると翼を広げて飛翔した。


地上からかなり離れ人々がゴマ粒程小さくなった辺りでゆっくりと飛びながら街を見下ろす。


朝と深夜の30分ずつ、こうやって空を散歩するのがいつもの鍛錬とは別に日課になりつつあった。
エルヴィンには何も言っていないが毎日ではないし決められた1時間は守っているのだ。文句は言わせない。

リヴァイはーーー言っていないが、石を持っているし何より勘のいい男だ。恐らく気が付いているだろう。






「……大丈夫だと思ってたんだけどなぁ」






実の所エルルカはあれからリヴァイとマトモに目が合わせられないでいる。
彼に悪気があったわけでないのは知っているし、自分の身は自分で守れると自負していた自分が彼に先手を打たれたのが悪いのだ。リヴァイは悪くない。
なのに、あのような態度を取ってしまい、それ以降目すら合わせないようにしているなど、何でもないと言いながらも『何かありました』と言っているようなものではないか。


実際、過去に忌わしい出来事はあったのだが。




いつまでも気まずいのも嫌だしリヴァイに謝らないといけないんだけどなぁ、と小さく溜息をつきながらエルルカは30分の飛行を終え帰路についた。








ーーーーーー
ーーーーー







「……団長と、…兵長、から?」






訓練もやがて終わる、という時だった。
別の隊のあまり顔の知らない兵士に声をかけられ、胡乱げに振り返ったエルルカに伝えられた内容は『エルヴィン団長と兵長が厩舎で待っている』との事だった。
その兵士が真っ青になりながらびくびくしている様子から元来の性格なのか、団長…否、兵長が余程不機嫌だったのか定かではないが自分に伝えに来た彼の為にも早めに行った方が良さそうだった。






「…分かった、すぐ行く。ありがとう」

「!あ、あの!」

「?」

「…そ……その……っ、ごめんなさい!気を付けて!」

「あ、」






何を、と呼び止める前に彼は走り去って行った。
謝るくらいだ、彼が何かやらかし、何らかの理由で自分が叱責されるのだろうか?
しかし心当たりがない。



てくてくと厩舎に向かいながらエルルカは思案する。



そもそもこれから執務室に行くのだ、リヴァイもいるのなら執務室、もしくは団長室で話しても良いのではないだろうか。
そうでないとすれば厩舎に何かあるのだろうか。






「………………?」






訓練を終えた兵士達が兵舎へ向かう中、ただ1人エルルカだけがその波に逆らって厩舎を目指しているのをとある人物だけが気付いていた。














「よいしょ、と」





1番奥の厩舎の重い扉を開け(重いと言ってもゾルディック家の1の門には全然及ばないのだが)、エルルカは薄暗い中を見渡した。





「……エルヴィン、リヴァイ…?」





いつもなら円で分かる為真っ直ぐ彼らの元へ歩けるのだが、如何せん以前の壁外調査から本調子でないのか日によってオーラが安定しなくなっており、調子が良い日だけ散歩に出ているのだが今日に至っては円が張れない程不安定になっていた。
その為何となく人の気配のある方へとゆっくり向かっていく。





「……ねぇ、あたし何か、っ!?」






ガッ!!と何者かに両腕を捕まれ口元に布を押し当てられた。
地面に伏せられ頭ごと身体を地に押し付けられる。
宛てがわれた布からは微かに薬品のような匂いがした。





「静かにしてろ」

「はっ、団長達の事名前で呼んでんのか?
やっぱりあの人達と寝てんじゃねぇの?」

「(しまったっ……!)」





2人、否、3人掛りでエルルカを押さえつけておりグッと振りほどこうにも関節を押さえられて思うように抵抗が出来ない。
力ずくで何とか出来ないことも無いが、顔が見えないが団長達と呼んでいる手前兵士達なのだろう。
自分が力ずくで振り解けば怪我をさせるだけでは済まない可能性があった。
約束がある、殺すわけにはいかないのだ。





暗闇の中、もう1人別の誰かが現れると両腕、両手首、両足をグルグルとロープでエルルカを拘束する。






「リ、ヴァ……イ……」






縛り終わる頃にはエルルカの意識は沈んでいた。






ーーーーー
ーーーーーー








「……?」





所要でエルヴィンの許を訪れていたリヴァイはふとある方角に首を傾けた。


呼ばれたような気がしたが、気のせいか。






「リヴァイ?」

「……いや、何でもない」

「何でもない、という顔ではないな」

「……、呼ばれた気がしただけだ。」

「呼ばれた?」






エルヴィンの軽い追求に視線を外さないまま答えたが、リヴァイは何か引っ掛かりを感じていた。






「……前にも似たような事があった」

「呼ばれた気がした、という事か?」

「あぁ。…前の壁外調査でエルルカが俺達を待っていた時だ。
あの時、念を使っていたから例の石が反応していたが…今回は何の反応もない。気のせいだろう」

「……その割に、納得していないようだが?」

「………………嫌な予感はしているが、俺も人間だからな。
一々嫌な勘ばかりに従っていてはーーー」






バンッ





「し、失礼します!!!
先程ーーー」








ーーーーーー
ーーーーー







「……っ……、?」






ぼんやりとした頭のままエルルカはゆっくり目を覚ました。
別の薬品も嗅がされたのか身体が妙に痺れており、縛られている事、はっきりしない頭と相俟って思うように身体が動かなかった。
薬や毒の類は殆ど効かないつもりだったが、やはり異世界の物となると個体によって少々効き目が違うのだろうか。




くらくらとする脳内に耐えながら視線だけで辺りを見渡すと見慣れない場所だった。
貴族の家のような随分と綺麗な室内で、兵舎や厩舎と違い木造でない辺り兵団の敷地ですら無い可能性が高かった。


それ以外に分かるとすれば窓から見える景色からして夜、
そして自分は自室の物とは全く質の違う上質なベッドの上にいるという事だった。






「(く、そ……あたま、まわらない……)」






回転しない脳内でも、ここは危険だと警鐘を鳴らしている。
ましてやよりによって念が使えない日なのだ、体術すら奪われた不自由の身で危険を感じない方がおかしいというものだろう。


兎に角此処を離れなければと力の入らない身体に鞭打ってコロンと反転した。


なんの薬品を使われたのか見当もつかないがその動きだけでも普段の鍛錬以上にかなり疲労してしまい、エルルカは肩で息をしながら助けを叫ばれないようにか猿轡にされている布をギリッと噛んだ。






「(くそ……っ)」






それでも何とか身体を転がしてベッドから転げ落ちればゆっくりと芋虫のように身体を這いずって唯一見えている窓へと向かった。


ずる、ずる、と這い身を縮こませて身体を無理矢理起こす。
壁にもたれると1度そこで息を整える為に止まった。




かといってあまり休憩している暇はないのだ。
何時からここにいるのかは分からないが必ず人が来る。


見つかるわけにはいかない。



そう思ってバネのように身体に反動をつけた刹那ーーー







「おぉっと、危ない危ない」

「っぐ……!」






ガッ、と背中に回っていたロープを掴まれてぐいっと引かれたエルルカは一気に床に転がされた。
背中を打ち付けた衝撃で一瞬呼吸が詰まるがゲホッと1度咳を零して微かに目を開ける。






「っ、……!?」

「きひひ、誰だって顔だな。昼間お前を売りに来た兵士の知り合いだよ。
売られたんだよお前。
ったく運がないねぇ、同じ兵士に売られるなんてな」







茶髪の短い髪をした20代から30代の男はロープに縛り付けられたエルルカの足元から頭までをジロジロと品定めをするように眺めた後舌なめずりをし、卑しく嗤った。







「そんな小さいナリして、兵団の団長と兵士長の咥えてんだって??
見た目によらずやるんだな、お前」

「(触んな……!!)」

「おいおい、そんなにヤリ手なら別に俺の相手してくれてもいいだろ?
結構顔が良いし傷も無いからなかなか高値で買ったんだぜ」






エルルカは伸びてきた手から逃れるように身を捩りギロッとその男を睨みつける。
ビリッと痺れるような鋭い殺気に一瞬男はびくりと怯んだが身動きが取れないエルルカを再認識してスッと表情を落とした。






「生意気だなお前。売られた奴隷の分際で主人に逆らうのか?」

「っ、ぐ!!」





胸倉を掴まれた矢先、バキッと頬を殴られエルルカは本日何度目と知れないまま床に叩きつけられた。
拳が当たる直前、咄嗟にオーラを込めて硬をしてみたがやはり不安定なのか上手く込められず殆ど防御出来ないままだった。
そのまま力任せに腹部を蹴られエルルカは痛みに呻く。






「あーあ、大人しくしときゃ痛い事しなかったってのに。」

「……」

「ま、お前も女だ。犯されてる内に従順になるだろ」






エルルカは男の言葉に思考を停止した。
そして脳裏でゆっくりと言葉の意味を認識する。






「(……犯、す?あた…し……を……?)」

「さてと。その生意気な性格を調教してやるか」






ぐいっとエルルカを縛っているロープを持ち上げられ最初に寝かされていたベッドに投げ込まれると、サァッとエルルカの表情が青ざめた。






いや。


いやだ。


いやだいやだいやだ。


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!!!






チカッといつかの光景が走馬灯のように脳裏を過ぎった。






衣服にかけられる手。


卑しく嗤う男。



嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。



ーーー助けて!!






「(兄さんっ、姉さんっ、ママ、ししょ……っ)」





ビリィッと力任せに団服の胸元を破られた時、エルルカはギュッと目を瞑った。





「(リヴァイ……!!!!!)」





つぅ、と頬に雫が伝った。








ドゴォンッ!!!!!






「エルルカ!!」

「な、なんだっ!?」






白い扉が爆発したかのように派手に吹っ飛び、飛び出してきたのは今まさに脳裏を過ぎったリヴァイそのものだった。



扉ってあんな音が出せるのか、とか。
何故彼がここにいるのか、とか。



驚きが隠せずぽかんとするエルルカの頬が濡れているのに気付いたリヴァイの目がスッと細まり一帯の空気が冷え込むほど殺気が辺りを満たした。







「殺す……!!」

「な、なんだ貴様!!どうやって屋敷に入った!!?」

「ア?黙れクソ野郎。
さっさとそいつから離れやがれ!!」






ツカツカと素早く歩いてきたかと思えばバキィッという音と共に強烈な蹴りが男の腹部を襲った。
壁に打ち付けられた男はぐったりとして呻き声を上げている。


その間にテキパキとリヴァイはエルルカの猿轡と縄を解いていった。






「……まだ何もされてねぇか?」

「え……」

「無事かって聞いてんだ」

「あ……う…ん……」










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