進撃の巨人 | ナノ


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夢じゃなかった。




まだ陽も登っていない薄暗い朝を迎えたエルルカが初めに思い浮かんだ言葉はそれだった。






昨夜の掃除の後、寝間着が無いので来た時の服そのままでベッドに向かおうとすると「折角備え付けられてんだからシャワーくらい浴びろ、汚え」とリヴァイから自分のよりも大きめのシャツ(聞かなかったが恐らく彼の物だろう)とタオルを自分に押し付け出て行った。


有り難く拝借してシャワーを浴びたもののそんなに分かりやすい空気を出したつもりは無かったのだが、“面倒見のいい”らしい彼は見ず知らずの小娘の為にシャツやタオルを貸すような人物だったんだろうか。



少なくとも半日で分かったのはリヴァイは超がつくほど潔癖症という事だ。






…否、半日どころか掃除をした四時間で分かったのだが。
きっちり洗濯しないと返されそうだ。







くぁ…と小さく欠伸をし、身体を伸ばしてベッドを出たエルルカは貰った団服をすぐには着ず、シャワーの際に洗った自分の服を乾いているのを確認して身に着ける。


まだ早い時間に活動するのは日課である筋トレをする為だ。







「よっ…と。」








軽くストレッチをしたエルルカはシャワー室の出入り口の木枠をジャンプして掴み、一度深呼吸してゆっくりと懸垂を始める。



筋トレは嫌いじゃない。
兄や姉達に少しでも近付く為には惜しまないし強くなって褒められるのは好きだった。
当たらなかったとしても兄達の一瞬でも突けるとまた少し強くなったと実感が出来た。




…今となってはいつどうやって帰れるかも分からないのでそれもしてもらえないけど。






58…59…60…と数を数えながらエルルカは雑念を払う事無く思案し続ける。






兄や姉達を思い出しながら100回を遂げると、ゆっくり降りて負荷をかけた腕を軽く伸ばす。





同じように腹筋、背筋、腕立て伏せ、と同じ回数を終わらせて行き陽が登り始めた頃に柔軟をして筋トレを終えた。






そのままシャワーを浴びて汗だくになった服と借りたシャツを洗い浴室に干してエルルカはそこで初めて団服のシャツとパンツと自分のブーツに袖を通す。







フリーサイズでは無いようだが団長と名乗っていたエルヴィンという人物は何故自分のサイズが分かったのだろう。
正確に言えばシャツが少し大きいのとウエストが緩いくらいだが、ウエストはベルトを締めれば良いのでまぁ問題無い。




まぁいいや、と深く考える事を止め、付け方の分からない複雑な形の細いベルトの仕組みを見ているとコンコンと扉のノック音が響いた。







「開いてるよ」







少ない足音に誰が来たのかは探らなくても分かる。






ガチャリ、と開いた扉から入ってきたシンプルな服装のリヴァイは既に眉間に皺を寄せていた。







「おはよう、」

「…あぁ。」







不機嫌そうなリヴァイに何かしたっけ…?と首を傾げながらエルルカはベルトを横に置いた。










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