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「そういえばお前いつ来たの?」
「キルアと会って一時間くらい経つから…二時間くらい前かしら。」
キルアと合流してから落ち着きを取り戻してきたルナに問い、それに答えると鼻の大きい番号札16番の男が近づいてきた。
「よっ、お二人さん。君達新顔だね、姉弟かい?」
「、」
「…えぇ、そうです。貴方は?」
キルアが口を開きかけたのを前に出る事で制止し、代わりに答えながらルナは少し警戒した。
「あぁ悪い悪い。俺はトンパ、よろしく。」
トンパと名乗る男は握手を求め手を差し出したが、一向にルナが手を出さないので今度はキルアが代わりに握手する。
表情には出さないが不審な目を向けるルナに気を悪くした様子は無く(微々たるものなのであるいは気付いていないのかもしれないのだが)、手を離してからキルアが口を開いた。
「トンパさんオレらが新顔ってなんで分かるの?」
「まーね。オレ10歳からもう35回もテスト受けてるからルーキーかそうじゃないかなんてすぐ分かるさ。」
「「(いばれる事じゃない…)」」
同じ事を考えていたのはお互い以外は知らない。
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潰せそうなルーキーを探していると仲良さげに話す顔立ちの良い二人を見つけた。
恋人同士…にしては少年は些か年下過ぎる気がするしそんな甘い気配はない。
ましてや、片方の女はさっきあのヒソカと話していた。
近付きたくなかったので会話まで聞こえなかったがあの時のヒソカとこの女の方が余程恋人らしい空気をしていた。
かなり美人だしヒソカとどういった関係か知らないがヒソカとあのように話せる時点で常人じゃない可能性が高い。
「よっ、お二人さん。新顔だね、姉弟かい?」
ヒソカは怖いし危険な賭けではあるが潰しておくに越した事は無いだろう。
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「お、そうだ。」
トンパは懐をゴソゴソと漁ると缶ジュースを取り出しキルアとルナに差し出す。
「お近づきのしるしって事で飲みなよ。お互いの健闘を祈ってさ。」
「(キル、これ…)」
「(あぁ…何かあるね。まぁお前は見てなよ。)ノド渇いてたんだ、ありがとう。」
「悪いけど私はいいわ…。喉渇いてないし甘いもの控えてるの。」
二人はアイコンタクトを取り話すと、勿論嘘ではあるが一番女性らしい理由を述べるとトンパの目に少し焦りが見えた。
「お…おっと失礼、オレとした事が女性に気を使うべきだったな。」
「いえ…」
「じゃあオレそろそろ行こうかな。またなお二人さん。」
そう言ってトンパは入り口の方へと去って言った。
人ゴミの中へと消えるその背を冷めた目で二人は見送っていた。
「…大丈夫?」
「あぁ。確かに何か入ってるがオレには効かないね。」
「良かった…。あの人、新人潰しって所かしらね。」
「だろうな。ルナが飲まないから焦ったんじゃね?」
「そうね…。(16って事は私とヒソカのやり取りを見ていた可能性が高いし、ヒソカと話せる私を潰したかったんでしょうけど…)」
トンパが焦りを見せた時の事を思い出してルナが考えているとジュースを飲み干したキルアは"そういやさ、"とルナを見上げた。
「あの時、何で姉弟じゃないって言わなかったんだ?」
「あぁ……嫌だった?」
「違うけど…」
「私はキルが弟なら良かったな、って思ってたから言ってみたんだけど…」
「そっか。」
自分と同じように考えていたルナに嬉しそうな笑みを向けキルアは空き缶を蹴った。
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