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そのあと癒月が部屋を出ていき、晴明が顔つきを変え神将は意識を晴明へと向けた。
「ーーー昌浩と交代で、お前達には癒月に付いてて貰いたいんじゃ。
基本的に昌浩には紅蓮と六合じゃが癒月に勾陣と太裳。
癒月が昌浩に付くと言っても二人は癒月から離れるでないぞ…時矢がいてもだ。」
『分かった』
『畏まりました』
「少なくとも、癒月を一人にするな。
癒月を狙う目的が分からない以上、護りは固めなければならん。」
晴明はそう呟いて六壬勅盤を取り出した。
「癒月様、失礼します。」
「入るぞ。」
太裳と勾陣が癒月の部屋に入ると縫物をしていた癒月は目を丸くさせた。
「どうしたの?」
「本日から癒月様の護衛になりました。」
「え、でも…」
「晴明の命だ。」
「時がいるのに?」
「あぁ」
「ええ。」
二人が同時に答え、少し申し訳なさそうに眉を下げた癒月は糸を結んで噛み切った。
「匂袋か?」
「うん、彰子姫と市に行った時に買ったの。」
「クスクス…」
「くっくっ」
突然笑い始めた勾陣と太裳に癒月は首を傾げる。
「どうしたの?」
「いや、お前本当に騰蛇を好いてるんだな、とつい思ってな。」
「私も同感です。」
「な、何で急に……!?」
頬を赤らめ動揺した#癒月に勾陣は癒月が使っていたであろう生地を指さす。
「それ、騰蛇の色を連想させたのだろう?」
「う、」
「分かりやすいですね、相変わらず。」
「紅蓮や昌浩は気づかなかったよ?」
「お前、私と太裳を誰だと思っている?」
勾陣は不敵な笑みを、太裳は穏やかな笑みを癒月に向けた。
「お前は私らの妹分だからな。」
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「よっ…と。」
《癒月》
《癒月様…》
《姫…》
塀を乗り越えた癒月に隠行している三人から待ったがかかる。
言われる事は分かっていたので癒月に苦笑した。
「止めないで。」
《ですが、》
《お前狙われているかもしれないんだぞ。》
「分かって、る!?」
《っ、姫!?》
カクン、と引っ張られるかのように足を滑らせた癒月は反対側へ体勢を崩す。
落ちると反射的に目を瞑った癒月は暖かいものに包まれた。
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