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「……、…?」
雲雀は髪を触られる感触がして二度目の覚醒を迎えると、先程のまま霧兎に膝枕された状態だった。
霧兎は雲雀の髪を梳きながら心配そうに見下ろす。
「起こした?」
「大丈夫だよ。
それより…」
「霧兎。」
雲雀が起き上がりながら何か言葉を紡ごうとした時、まるでタイミングを計っていたように骸が出入り口に姿を見せる。
「骸…」
「おいで、霧兎。」
「霧兎待っ…」
霧兎は無言で立ち上がり、目を瞑って骸の許へ歩み寄った。
「いい子です。
では行きましょうか。」
骸が先に部屋を出て行く。
霧兎は部屋を出る際に一度足を止め雲雀に振り返る。
「…トンファー、そこに置いといたから。
俺では君を此処から出してあげられない…ごめんね。」
「霧兎っ…」
「じゃあ…行くね。」
雲雀は手を伸ばして霧兎を引き止めようとするが、体が悲鳴をあげてそれは叶わなかった。
「骸…?」
骸について来た筈の霧兎は部屋に骸が居らず首を傾げた。
代わりと言わんばかりに犬がソファーに座ってゲームをしている。
「うわっ、……つまんねーの。」
「…………」
「あ、……あれ、なんだっけ名前。」
「…霧兎。
骸は?」
「今柿ピーとどっか行きましたよー?」
「…そか。」
それ以上何も言わず、霧兎は犬の座っているソファーの端にちょこんと座った。
暫く犬のやっているゲームの音だけが聞こえていたが、やがて犬が口を開いた。
「…骸さんは本当に貴女が好きなんれすね。」
「…どういう事?」
「こっち来た時も霧兎さん探して毎日見てたし、さっきまで霧兎さんの惚気話してたびょん。」
「…………」
あはは…と苦笑いする霧兎に犬は続ける。
「骸さんは霧兎さんを泣かせたあの…何だっけ、アヒル?」
「…恭弥の事?雲雀恭弥」
「そうそう、霧兎さんを泣かせたソイツが憎いらしいんれす。
霧兎さんが止めなきゃ殺してたかもしれませんね。
ま、俺はそっちでも良かったけど。」
「…………‥」
霧兎はゆっくり目を閉じ口を開いた。
「…骸の今までの話聞かせてくれない?
簡単にで良いから」
「あんま話したくねーけど…
…………多分骸さんが霧兎さんと離れ離れになった後の話なんれすが…」
「………」
「その後、別の…俺や柿ピーのいたエストラーネオファミリーに連れて来られたんれすよ。
」
「!」
エストラーネオファミリーという名に霧兎は聞き覚えがあった。
「エストラーネオって…」
「子供を人体実験のモルモットにしていたファミリーだびょん。
そこで、例外なく骸さんもモルモットにされたんれす。」
「…!」
「…たった一人でその現状をぶっ壊した人がいたんれす。
大人しかったし目立つ事も無かったし…声も多分その時初めて聞いたびょん。
それが骸さんなんれす。」
「…骸が…じゃあエストラーネオは…」
「骸さんが潰したんれすよ。」
そこで霧兎は震える瞼を押し上げ目を開いた。
そこへ、骸と千種が戻ってくる。
「骸、」
「霧兎…!」
立ち上がった霧兎の姿を捕らえパァッ、と表情を輝かせた骸は霧兎を抱きしめた。
「わっ…骸?」
「骸様…時間が…」
「分かっています、千種。」
「骸…?」
「じきにボンゴレが来る…
霧兎…すみませんが、もう少し眠っていただきます。」
「えっ…ちょ……む、くろ…」
手刀を入れられた霧兎は遠退く意識の中、悲笑を浮かべる骸を見た気がした。
「千種、犬…彼らがきます。
出迎えてあげてください。」
「分かりましたびょん」
「はい」
to be continued…
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