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休み時間の並盛中学校。
それでも校庭にいる生徒は少なく、大抵の生徒は校舎内にいた。
そんな中、場違いとも言えるような傷一つ無いリムジンが校庭の、学校の玄関の前で止まった。
只でさえ目立つので、勿論窓際には野次馬達が男女問わず集まってざわついている。
暫くして、紅髪の青年が正装で降りてきた。
「「きゃぁぁぁぁあっ!!」」
女子達の黄色い声援。
青年はニコッと女子達に笑みを向けると反対側のドアに回ってドアを開けた。
ゆっくりとした足取りで降りてきたのは膝丈のスカートを着た、同じく正装の男か女か分かりにくい顔立ちの女。
スカートでなかったら男だと思えただろう。
青年に促され、その女は校内に入って行った。
所々から生徒達の声が聞こえる。
「転校生?」
「そうじゃねぇか?」
「お金持ちっぽかったよね」
ちらほら聞こえていた会話は鳴り響くチャイムの音と共に中断された。
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「えー…では来週から…」
「いえ、その必要はありません。
明日から登校させていただきます。」
先程の二人は校長室を訪れ、入学手続きをしていた。
何故か校長はギクシャクしている。
「で、ですが…」
「制服や必要なものは既に全て揃えてあります。
…だろう?」
ぎこちない校長と話している少女は背後に控えている紅髪の青年に問いかけた。
腕を組んで話を聞いていた青年は笑みを浮かべながら頷く。
「…若の言う通り、全て揃えてあります。
それに、若は初めての日本の学校なので早く行きたいんですよ。」
青年は校長にそう語りかけると、校長はほっとした笑みを浮かべて「分かりました」と了承した。
それを聞いて、少女は立ち上がり頭を下げた。
「明日から宜しくお願いします。」
「いえ、此方こそ。
ようこそ並盛中学へ。」
それから少女は校長に許可を貰い、校内を見回る事にした。
礼を言って校長室を出ようとすると、はっとした表情をした校長が慌てて呼び止める。
「あっ…紅海様!」
「…?何でしょうか。」
「余計かとは思うのですが…
う…うちの生徒として、在学している…雲雀恭弥という男子生徒には気をつけて下さい…。」
「?」
ビクビクと怯えながらしどろもどろと話す校長とは正反対に、少女は瞠目した。
そしてクスッと笑って口を開く。
「何故…でしょう?」
「風紀委員会で委員長を努めているのですが…人が群れるのを嫌い、気にくわなければ愛用のトンファーで殴り倒すのです…
聞いた話によると…なんでも、並盛町の秩序と言われているんだとか…」
「へぇ…彼は今何処に?」
興味津々の少女。
校長は一瞬言葉につまり、慌ててた。
「屋上か応接室かと…って、彼の許に行く気ですか!?」
「そうですが?」
「き、危険です!!
いくらあの紅海組の方でも…」
少女はその言葉にピクッと反応したが、無視して校長に笑みを向けた。
「挨拶しに行くだけなので大丈夫ですよ。」
「しかしっ…」
「それに、そんな方がいると知ってて挨拶も何も無いのは失礼ですから。」
そう言って、少女は「では失礼します」と言って校長室を後にした。
「すいません。
若は会ってみたいだけなんだと思います。」
残っていた紅髪の青年はうなだれる校長に謝罪した。
「会ってみたい…といいますと?」
「若はイタリアに行く前まで仲が良かった従兄弟がいるんです。
その従兄弟の名前はーーーー。」
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「ふぁ…、…」
風紀委員長・雲雀恭弥は屋上で寝転んで暇を弄んでいた。
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