▼ 09-1
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「お世話になりましたー」
病院の入り口で振り返りヒラヒラと手を振って見送る顔見知りの看護師達に手を振る。
先日の任務で負った傷で暫く通院していたカノトは本日で完治を言い渡された。
元々傷を負ってから暫くは波の国で静養しており帰路も徒歩だったので木ノ葉の里に戻った頃には殆ど塞がっていたのだが、上司であり幼馴染みであるカカシと一連の報告を受けていた三代目火影・ヒルゼンからも病院に行くよう押されてしまったのだ。
必要無いかとも思っていたもののやはり病院とは凄いもので、職業柄生傷が絶えない為に傷痕が残るのを毎回覚悟しているカノトだが病院から貰う薬は傷痕も殆ど残らないため重宝していた。
「カノト」
「カカシ?何でここに?」
病院を出てすぐ向かいから歩いてきたカカシに首を傾げる。
ポケットに入れていた右手を抜いて軽く挙げればカカシはカノトの傍で歩みを止めた。
「何でって…迎えに来たんでしょーよ。あれ見てない?」
「“あれ”?」
あれ、とカカシが指差した空を目で辿ると空には連絡用の鴉が飛び回っていた。
「火影様?」
「そ。招集かかってる。
お前も連れて来るよう言われてる」
「あたし?っていうかナルト達は?」
「今日の任務は終わってもう解散させたよ」
「え、もう終わったの?!今から見に行こうと思ってたのに…」
「ナルトがボコボコになったけど特に問題なく終了。
…ま、強いて言えば最近チームワークが乱れてるなァ」
並んで歩き出すとカカシが簡単に報告する。
ここ最近はどちらかの家に転がり込んでは一緒に食事をするのが日課になりつつあり、その日の三人の様子は毎日聞いていた。
(特にここ数日はカノトの負った怪我を理由にカカシ自ら食事の用意をしてくれている)
彼が上司なので問題が無ければわざわざ報告する義理は無いのだが、三人を可愛がっており波の国から帰って以来今日まで任務に参加出来ずにいるカノトに配慮してだろう。
カカシの言葉を聞いた、心当たりしかないカノトは肩を落として小さく溜息をついた。
「またナルトとサスケね…」
「特にサスケにはどこか焦りが見える。…空回らなければ良いんだがな。」
「………あの子、まだイタチの事追ってるのよね」
「知ってるのか?」
「…うん。事件自体も知ってるけど、イタチとはちょっと顔見知りというか…」
少し憂いを滲ませた表情で苦笑を零したカノトにカカシは右目を細めた。
「…?」
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火影室の前で受付に報告書を出しに行ったカカシを待っていたカノトはこちらへ向かって来る友人達の姿を見て表情を輝かせた。
「紅!アスマ!」
「カノト?」
「よぅ、傷の具合はどうだ?」
「さっき病院で完治って言われたよ」
二人に小走りで駆け寄ったカノトはニコッと笑みを浮かべた。
「何でアンタがここに?」
「さぁ…?病院の帰りにカカシが私も招集かかってるからって迎えに来てくれたの」
紅の問いに首を傾げながら応えると後ろからポケットに手を入れてカカシが気怠そうに歩いてきた。
「おかえり、遅かったね」
「ただいま。
あぁ…イルカ先生が受付で、ナルト達の事で少し話してた」
「え、そうなの?
あたしちょっと挨拶して…」
「カノト、招集掛かってるんだ。行くぞ」
「でも挨拶だけだよ?まだ全員集まってないみたいだし」
「…ほら、もう行くぞ」
「ちょ…」
肩を落として小さく溜息をつきながらカノトの腕を優しく引っ張ったカカシは火影室をノックして入室していき、カノトもやや戸惑いながらもそれについて行く。
それを見て紅とアスマは顔を見合わせて呆れたように苦笑を溢し、遅れて火影室へと入って行った。
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