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ザクッ!!
「ぐあぁっ」
放った苦無が首に刺さり血が噴き出したのを最後に絶命した追手の忍が倒れた。
『お嬢、無事か』
「は…何とか、ね」
『…大丈夫では無さそうだな』
パタパタと口の端から溢れる血を拭い、肩で息をするカノトは脇腹の切り傷を抑え乾いた笑いを浮かべた。
トン…と木に背中を預けて視線を滑らせると、数メートル先には息絶えたばかりの忍が6人程倒れている。
「まさか……紛れ込む為の変化が案外すぐバレるとは思わなかったなぁ…
すぐ逃げるつもりだったから、適当に変化したのがいけなかったか…」
『あの寄せ集めの集団の中に全員の顔を把握し鼻の効くヤツがいたんだ、仕方無い…』
「ま、でも…さっすがに…上忍クラス4人を同時に相手するのは骨が折れる…ね…
カカシや再不斬のレベルじゃないだけ…マシ、だけど………逃げながら戦ってたから、随分遠くまで来ちゃった…」
『…お嬢、少し休め。
その間我が守ろう。』
寄り添う狼をくしゃりと撫で、カノトは明るくなった空を見上げた。
当に日は登っている。
癒輝を控えさせているとはいえカカシも自分が戻らない事に何らかの異変を感じている筈だし、癒輝も契約しているチャクラを通して自分に何かが起こっているのは気付いている筈だ。
ポーチから簡易の救急セットを取り出し脇腹の血を拭って包帯を巻き付けた。
本当は消毒と傷を縫うところまでしたいが消毒する物も無ければ悠長な事を言える程の時間が無い為これで我慢する。
「…駄目。休んでられない。
ガトーが…再不斬のとこに、辿り着く前に伝えないと…
っ……雇い主が、契約違反なら、再不斬はこちらに…攻撃する理由は、ない筈…」
『チャクラ切れするぞ、』
「…行こう。
大丈夫、ほら、あたしカカシよりはチャクラあるし…ね?」
よいしょ…、と身体を起こす。
蘭牙はやれやれと言うようにため息をついて隣の主を見上げた。
『なら風羽に乗せてもらえ。風羽なら負担は少ないだろう、我は下から追う。』
「うん。
ーーーー口寄せ!」
懐から巻物を取り出して素早く印を組む。
ドロンッと巻き起こる煙の中現れた巨大なミミズクの顔をカノトが撫でた。
『主様…お怪我が…』
「…大丈夫。
それより…急いでカカシ達のとこに連れてって、お願い」
『…仕方ありませんね。
分かりました、お気をつけ下さい』
風羽の足に乗り蘭牙と目を合わせて頷き合うと風羽が翼を羽撃せた。
蘭牙が来た道を戻るように走り出すと同時に同じ方向へ風羽が空を舞う。
頬を叩く風を感じながらカノトはふと苦笑を溢した。
「…これ、怒られるかなぁ」
『……怒られない事は無いかと思われますが。』
「…フォローしてくれる?」
『…………』
「……あれ、風羽ー?」
『…………』
誰に対して、とは言わずとも分かった風羽の言葉にカノトが助けを求めると風羽は聞こえない振りをして口を閉ざすのだった。
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